検索
ニュース

勝手に後をつけないで……行き過ぎた“tracking”に警鐘IT基礎英語

どこまでも追跡してくる広告。そうしたonline trackingがようやく問題視され始めた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 さっきGoogleで検索していた用語に関する宣伝が、Amazonのサイトに表示される。LINEに年齢や性別を教えた覚えはないのに、シミシワ対策とか白髪染めとか余計なお世話的広告が執拗に出てくる……。そんな現象に遭遇するたびに、“tracking”の不気味さを感じる。

 trackingは「追跡すること」の意味。もともとの「track」(トラック)という単語は、動物や人が通ってできた小道や足跡を意味する名詞で、そうした痕跡をたどって後をつけるという意味の動詞としても使われる。

 地面に残した足跡は消すことができても、ネット上に残した足跡を完全に消すことはできない。そして自分が残した痕跡は常にtrackingされている。

Online tracking is the practice of following, recording, storing, and repackaging your browsing history and habits in order to gather insights about what you do online or sell the data to third parties. Whenever you visit a web page, run a search, send an email, watch a video, or shop online - even if you’re just window-shopping - you can be sure someone, somewhere, is taking notes.(AVG

online trackingとは、あなたのブラウザ履歴や習慣を追跡・記録・保存・再パッケージする行為のこと。目的は、あなたがオンラインでやっていることに関する情報を集めたり、そのデータを第三者に売ったりすることにある。あなたがWebページを閲覧したり、検索したり、電子メールを送信したり、動画を見たり、オンラインショッピングをしたりするたびに(たとえ単なるウィンドウショッピングであっても)、必ず誰かがどこかで記録を取っている。

 こうしたユーザー追跡はどんどんエスカレートして、自分の行動に関する情報が自分の知らないところでやり取りされ、さまざまなサイトやアプリに表示されるターゲティング広告に利用されるまでになった。そうした行き過ぎに歯止めをかける形で、Appleは「iOS 14.5」のアップデートで「App Tracking Transparency」のポリシーを導入した。自分が使っているアプリが他社のアプリやWebサイトをまたいで自分を追跡しようとした場合、そのことをはっきりさせた上で、ユーザー自身がそれを許可するかどうか選択できるという仕組み。

photo
トラッキング問題が注目されたきっかけとなったAppleのApp Tracking Transparency

 ネット上でユーザーを付け回すのは、どう考えてもプライバシー侵害でしょ? と危機感を抱いたのはAppleだけではない。WebブラウザのFirefoxは早くからトラッキング防止機能を実装し、ユーザーが自分の個人情報の使われ方を制御できなくなった事態に警鐘を鳴らしていた

 米政府機関の連邦取引委員会(FTC)も、online trackingについて詳しく解説するページを設け、ネット上でプライバシーを守る方法を紹介している。

photo
FTCによるonline tracking解説ページ

 もちろんtrackingは迷惑な行為ばかりに使われるわけではない。荷物の配送状況を確認できるshipment trackingの機能は便利だし、物流などの業界ではあらゆる種類のtracking deviceが活躍している。

 ネット上の広告も、自分の閲覧履歴や属性に基づいて表示される方が便利だと思う人は活用すればいい。けれど誰だか分からない相手に知らないうちにtrackingされるのは、オンラインだろうとオフラインだろうと薄気味悪い。iOS 14.5のプライバシー重視に対しては業界からの反発も強かった。ユーザーにしてみれば「勝手に後をつけないで」と思うことはすごく単純で当たり前の常識に思えるけれど、ネット上では通用しないらしい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る