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統計から見る「テレビのオリンピック需要」幻想と「日本のテレビの20年」(3/4 ページ)

西田宗千佳さんが、テレビとオリンピックの関係を数字から検証した。

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「一家に一台」傾向がさらに強まる現在のテレビ

 一方で、数字を見ていると改めて感じるのは「テレビの需要が2012年以降、変わってしまった」ということだ。20年前とは所得水準が変わった、ということもあるだろう。だがそれ以上に、「地デジ移行で先食いした需要からの回復」の難しさも感じられる。

 これは以前も述べたことがあるが、地デジ移行前とその後では、家庭の中でのテレビの位置付けに変化が生まれたことが大きい。

 以下のグラフは、29型以下の「小型テレビ」と、37型もしくは40型以上の「大型テレビ」の出荷数の変化を描いたものだ。

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「小型」テレビと「大型」テレビに分けて数量の変化を分析。地デジ完全移行後には、個室向けを中心とした小型が一気に減った。大型の需要は堅調な回復が続いている

 2018年にJEITAの大型テレビのサイズ区分が「37型〜40型」「50型以上」から「40〜49型」「50型以上」に変わったため、それに合わせて途中で基準が変わっていることをご留意いただきたい。同様の理由から2018年1月から3月について、大型区分の集計がなく、そこを点線で表している。

 このグラフが示しているのはシンプルな事実だ。リビング向けの大型テレビは需要が回復したが、個室向けで低価格なテレビの需要が落ちて回復していない。すなわち、テレビは「一部屋一台」の時代から「一家に一台」へと戻ってしまった、ということなのだ。

 4Kテレビの台数が増え、大型化が進んでいるのは明確に「リビングでのより良い体験」を求めてのものだ。ここはシンプル。直接的に「オリンピックのためにテレビを買い替えた」人は少ないかもしれないが、買い替えた大型テレビでオリンピックを……という人はいるはずだ。この辺ではようやく「地デジという隕石」の影響から脱し、新しい生態系が回り始めた印象が強い。

 一方、小型テレビが売れなくなっている理由は複合要因と思われる。スマートフォンやPC、タブレットの普及もあるだろうし、低価格で利益率の低い小型テレビをJEITAに参加する大手メーカーらが作りたがらなくなった、ということもあるだろう。地上波放送の視聴者が高齢化している、と指摘されるのも、「自分の部屋にテレビがない」層が増えていることと無関係ではない。

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