「ポケモンユナイト」でeスポーツ「MOBA」は日本に根付くか キーワードは知名度と「基本無料」(2/2 ページ)
任天堂と中国Tencent子会社が手掛ける「ポケモンユナイト」。日本ではなじみのない「MOBA」というジャンルのゲームだ。日本での知名度こそ高くないが、海外では賞金約7億円の大会が開催される人気ジャンルでもある。ポケモンユナイトは、MOBAを日本に定着させることができるのか。
ポケモンの知名度が盛り上がりのカギに?
世界では人気ゲームジャンルとして確立しているMOBAだが、日本ではそこまで浸透していない。その理由は、やはりメジャーな国産タイトルが少なく、日本人になじみのあるキャラが登場する作品が少ないためだろう。LoLもDota 2も海外メーカーが開発しており、登場するのはオリジナルのキャラばかりだ。
一方で、ポケモンユナイトはポケモン社が制作に携わっている。1996年からシリーズ累計で3億8000万本以上を売り上げるシリーズの看板を使ったタイトルでもあるため、日本のプレイヤーからすれば他のMOBAよりとっつきやすい作品だろう。
実はポケモンシリーズは過去にも、マイナーなゲームジャンルの知名度を引き上げた実績がある。その一つが「ポケモンGO」だ。
ポケモンGO以前の位置情報ゲームには「Ingress」(イングレス)などがあったが、これもやはり“知る人ぞ知る”タイトルだった。「ポケモンユナイト」がもしヒットすれば、ポケモンGOに対する「ドラゴンクエストウォーク」のように、他のキャラクターコンテンツも「MOBA」に身を乗り出す可能性も考えられる。
高額な賞金を出すためには「基本無料」も重要
「ポケモンユナイト」が基本無料のゲームであるという点も、同作がeスポーツとして盛り上がる理由の一つになり得る。実は日本のeスポーツにおいて、ゲームが無料というのは大会を開く上で重要なポイントになっているためだ。
日本でゲームを使った賞金制の大会を開こうとした場合、景品表示法によってソフトの金額が5000円未満であれば価格の20倍まで、5000円以上であれば10万円まで、または「懸賞に係る売上予定総額の2%まで」に制限される。
しかし、無料で配布する形の場合はこの制約から外れるため、国内でも高額な賞金の大会が開ける。例えばスマートフォンゲーム「モンスターストライク」は、対戦に特化したゲームアプリ「モンスターストライク スタジアム」を無料でリリースすることで、国内でも優勝賞金5000万円の大会を実施している。
LoLやDota 2、「Fortnite」(フォートナイト)や「Apex Legends」など、eスポーツとして人気のタイトルも多くは基本無料だ。つまり、ポケモンユナイトは知名度のあるIPを活用しつつ、eスポーツとして大会を開きやすい条件も満たしているといえる。
今のところ公式サイトなどでは明確に打ち出していないが、任天堂は過去に「スプラトゥーン2」の大会などを開催しているため、オフィシャルな大会が開催される可能性は十分に考えられる。任天堂などの開発側が大会を主催せずとも、第三者が主導する展開もあるかもしれない。
団体競技の浸透=プロプレイヤーの雇用増に?
ポケモンユナイトが日本でどこまでヒットするかは未知数だが、すでにSNS上で同じチームとしてプレイするメンバーを募る投稿などが相次いでいる。このまま勢いを伸ばせば、日本でMOBAというゲームジャンルを新たに根付かせるきっかけになるかもしれない。
世界のeスポーツ大会の賞金総額をみると、MOBAやチーム制のシューティングゲームなどの団体競技が上位の多くを占める。チーム制のゲームではLoLのようにプロリーグ戦が年中行われているゲームも多く、プロプレイヤーの雇用源にもなっている。
こうしたプロリーグはゲームごとに規模が拡大傾向にあり、プロプレイヤーの受け皿も広がりつつある。ポケモンユナイトをきっかけに、チーム制のeスポーツの普及が加速すれば、日本でも多くの若者がプロプレイヤーを目指しやすくなり、eスポーツのさらなる盛り上がりにつながるかもしれない。
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