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美しいが作りづらい「ゼリーの中に咲く花」、フード3Dプリンタで手軽に 東大、「Flower Jelly Printer」開発Innovative Tech(1/2 ページ)

制作には困難を極めるフラワーゼリー。これを簡単に作れる3Dプリンタが誕生した。

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Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 東京大学の研究チームが開発した「Flower Jelly Printer」は、透明なゼリーの中に色とりどりの花を咲かせる“フラワーゼリー”を作製できるシステムだ。ユーザーは設計ソフトウェアで3Dプレビューしながら花をデザインするだけ。フード3Dプリンタによって繊細な和菓子のような美しいゼリーを誰でも作れるようになる。

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Flower Jelly Printerで制作したフラワーゼリーの作品例

 フラワーゼリーとは、透明なゼリーの中に花の形をしたゼリーが浮かぶ芸術的なスイーツを指す。通常、料理人が手作業でナイフをゼリーに刺し込み花びらを造形する。造形後にゼリーをひっくり返して盛り付けるため、ゼリーの底面からナイフを入れることになる。完成した形は必ず上下逆になるため、常に反対側から見た完成形を想像しつつ、ナイフの微妙な挿入角度を適切な距離でコントロールしなければならない。

 ゼリーという柔らかい素材上での作業、長時間の集中、間違えてもやり直しができないなど、繊細で美しいフラワーゼリーを仕上げるには、熟練した技術を要する。

 今回は、フラワーゼリーの形状と構造をデザインしプレビューするための設計ソフトウェア、透明なゼリーの中に色のついたゼリーを直接注入するスリットインジェクションプリンティング技術と、それを用いたフード3Dプリンタを開発した。

 ゼリーは柔らかく冷えて固まるまでに時間がかかるため、既存のフード3Dプリンタを用いた造形には適していない。今回提案するスリットインジェクションプリンティング技術では、花びらの形をしたナイフを透明なゼリーに刺し込み、抜く際にその切れ目に色付きのゼリーを注入しながらナイフを抜く一連の動作を実行する。ゼリーに切り込みを入れて別のゼリーを即座に入れるため、形状を保てるわけだ。

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システムの概要図

 今回使用したフード3Dプリンタは、フィラメントを溶かして積層していくFDMタイプの3Dプリンタを改造。電動の回転台と花弁型ナイフを取り付けられる「ペーストエクストルーダー」を追加した。

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改造したプリンタの概要。ナイフで透明なゼリーに切れ目を入れ、次に色付きのゼリーを注入しながらナイフを抜いて花びらを造形する
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