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VTuberの中の人が入れ替わったらどうする? 中国の愛好家はこう考えるInnovative Tech(1/4 ページ)

VTuberは中国でも大きな人気を誇る。彼らの中の人に対する関心と捉え方がインタビューによって浮かび上がってきた。

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Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 中国・香港城市大学、カナダ・トロント大学、米カーネギーメロン大学による研究チームが執筆した論文「More Kawaii than a Real-Person Live Streamer: Understanding How the Otaku Community Engages with and Perceives Virtual YouTubers」は、視聴者がバーチャルYouTuber(VTuber)のライブストリーミングとどのように関わり、声や動きを担当する“中の人”をどのように認識しているのかなどを理解するため、複数の視聴者にインタビューし分析したものだ。

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論文のトップページ

 インタビュー対象の視聴者は、少なくとも1年間、週に1回はVTuberのライブストリームを見ている21人を選抜した。全員中国人で男性と学生が多く、10代から20代と若いのが特徴だ。募集は、主に中国のファンサイトであるNGA(National Geography of Azeroth)のVTuberディスカッションボードで行った。

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インタビュー対象の視聴者リスト

 インタビューは2019年11月と12月、2020年3月と4月に1回約60分、ビデオまたは音声通話で実施。インタビュー内容には、VTuberのコンテンツを視聴する動機、どのようなタイプのコンテンツを視聴し、どのように楽しんだのか、VTuberや他の視聴者とどのように交流したのかなどの質問が含まれている。

 その中で特に印象に残った分析結果が以下のようなものだ。

VTuberと実在の人物ストリーマーの違い

 最初にいえるのは、ゲームやアニメ、漫画などのバーチャルな世界のマインドを持っていること。視聴者5はこう述べている。「実在の人物によるストリーマーが“自分は異空間から来た!”と言ったら違和感を覚えるが、VTuberがそう言っても変だとは思わない」

 このように、VTuberに対しては、現実とは異なるバーチャルな世界と同様な期待を持っていると考えられる。

 現実生活では恥ずかしい、汚い、攻撃的、または不適切な言動の多くは、VTuberの文脈では正常、許容可能、適切と判断されている。視聴者2はこう述べている。「バーチャルキャラクターと知っているから、彼女の愚かな行動を許容できる。むしろ、それが彼女を可愛くしている。人間のストリーマーがあんなことをしたら恥ずかしいし、違和感があるよね」

 このように視聴者は、VTuberと実在の人物ストリーマーとで、異なる許容範囲を持っていると考えられる。

 許容範囲の違いは、バーチャルギフトの勧誘行動にも当てはまる。実在の人物ストリーマーがバーチャルギフトの勧誘行動を行うと、嫉妬といった嫌悪感を抱く人が多い。一方で、VTuberだと受け入れられる傾向が多いという。例えば、お金を稼ぐことに熱心なペルソナを持ち、ストリーム中にプレゼントを要求することが多い「神楽めあ」を挙げ、視聴者8はこう述べている。「彼女はスノッブでもないし、お金に貪欲でもない。プレゼントを頼んでくるときは可愛くて好き」

 視聴者3はこう述べている。「VTuberにバーチャルギフトを買うのは、ゲームのバーチャルグッズを買うようなもの。リアルな人にチップを渡すような感覚ではない」

 このようにVTuberは、お金を視聴者に要求しても、実在の人物ストリーマーより嫌悪感を抱かれにくく、場合によっては個性に変化すると考えられる。

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