YouTubeはテレビ地上波に追い付いた これからどう変わるのか(4/4 ページ)
このコロナ禍で、テレビとネット動画の関係は変わりつつあるようだ。どの規模感で変化しているのか、西田宗千佳さんが分析する。
メディア価値が大きくなれば当然、他のメディアへの影響も大きくなる。ここ数年、地上波にYouTubeのコンテンツ・出演者が与える影響は拡大しているが、逆にYouTubeのコンテンツ自体も、テレビから大きく影響を受けて広がっている。
芸能人や、過去に名をはせた著名人がYouTube配信を始めるのも、「知名度を使った収益化手段」として、最も手軽かつ可能性の高いものであるからに他ならない。
一方、こうした現象は全て「YouTubeというサービス総体」でのことである、という点に注意が必要だ。
YouTubeは大量のコンテンツの集合体であり、地上波と異なり、皆が同じものを見ているわけではない。「使っている」という状況についても、SNSのフィードやWebサイトに埋め込まれたものを見ていることもあれば、YouTubeにアクセスしてチャンネル登録したものを見ていることもある。LINEなどで教えてもらったリンクをたどって視聴していることもあるだろう。
圧倒的に多数の人がリーチしているメディアであるが、それぞれ見ている姿は全く異なる。見ているものが違う以上、それぞれに与える影響・情報も当然異なってくる。SNSと同じ構造だが、動画の視聴が収益に直結するという意味では、YouTubeの方がよりビジネス的ではある。エコーチェンバー的な影響は当然考えなくてはならない。
ニッチなものも多数あり、それぞれのニーズに合わせて視聴しているということは、「家族で見る」時間や「みんなが見る人気番組をやっている」時間にはなじまず、他の時間に強い・一人の時間に強い、ということでもある。昼間から夕方までや深夜に近い時間帯は地上波よりもYouTubeが優位になる可能性が高い。
オンデマンドでいつでも見られるとはいえ、今後はそうした「時間帯を考えた配信」「時間帯を考えたビジネス形態」が出てくるかもしれない。
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