VRイベント人気も収益厳しく“やりがい”頼み……有志イベントにみる「新しい稼ぎ方」とは(2/2 ページ)
コロナ禍でVRイベントが盛り上がりを見せるが、クリエイターへの報酬や収益の確保などビジネス面で課題も残る。有志が主催するVRイベントを例に、利益を上げる方法を考えた。
VRChatは課金システムなし 収益をどう上げるか
高い人気を持つVRイベントがある一方で、収益を上げるなどビジネスとして成功させるのはまだまだ難しい。日本で多くのVRユーザーが集まるVRChatには、イベント参加費などを支払う課金システムが備わっていないからだ。企業協賛などが少ない小規模なVRイベントならなおさらだ。
21年3月にVRChatで開催した「SXSW Online XR」では325ドル(約3万5000円)のチケットを公式サイトで販売。登録したユーザー名をVR会場でスタッフが目視で確認するという極めてアナログな手法を採っていたが、これは特例中の特例だろう。
VR展示即売会に参加する3Dクリエイターは、アバターなどのデータを作品販売サイト「BOOTH」などで販売し、その利益を得られる。しかしワールドそのものを作成するクリエイターや、ライブやダンスで参加者を楽しませるパフォーマーが収益を得るには、自力で地道な営業活動をしてスポンサーを募る手間が必要だ。イベント運営そのものも、創作活動だけでなくさまざまな雑務を担当するスタッフの人件費がかかる。
VRChatイベントは無料で参加できるものが大半だが、運営陣のやりがいで維持できているようにも見える。より多くの参加者を集め、大きなコミュニティーに育てたいと願ったとき、最低限の収益性がなければ持続性に陰りが見えてくるかもしれない。
参加費に頼らない、有志イベントの稼ぎ方
収益や資金調達に取り組んだVRイベントの事例として紹介したいのが、有志が9月4〜12日にVRChatで開催するVR展示即売会「パラレルマーケット」だ。企業にパフォーマーのライブスポンサーとなってくれるよう働きかけ、PC周辺機器メーカーのPFUなど9社がスポンサーになった。
イベントを応援するクラウドファンディングも実施し、9月2日までに約60万円を調達。個人・企業ブースの参加費だけではなく、多方面から運営資金と、クリエイターやパフォーマーに還元する報酬を確保した。
企業への打診の仕方にも工夫がある。イベント内におけるPRメニューを提示するだけでなく、企業ごとに異なるKPIと予算に合わせて実現できることを提案した。例えばアバター販売を目的とした企業には、ブース出展の代わりに専用のイベントステージを用いた試着会を開催しよう、ワールド内にアバターペデスタル(試着が可能なディスプレイ)を複数設置しよう──といった具合だ。
主催者のあおみ(@AomeeVR)さんらパラレルマーケットの関係者は、これまで数多くのVRイベントに関わってきた人たちだ。適切な提案とそれを実現する技術力があって、初開催のイベントながら多くのスポンサーを集めることに成功したと考えられる。
VRChat上のVRイベントをリアルイベントと同等の、もしくはそれ以上の利益を作り出す存在へと育てるためには、VRChatの仕様への理解、VR空間におけるアピール方法の理解、そして参加者を巻き込んで全員でイベントを運営するという熱気が必要になるのだろう。
関連記事
- 「バーチャル秋葉原駅」からVR旅行に出発 車窓は“エモい”仮想世界 「バーチャルマーケット6」はすごかった
VRイベント「バーチャルマーケット6」を体験してみた。JR東日本が出展しているバーチャル秋葉原駅から山手線に乗ると、車窓に仮想世界が映る旅行気分が味わえた。 - アバター着替え放題の大騒ぎ 美少女キャラもロボットも 「バーチャルマーケット6」の遊び方
VRイベント「バーチャルマーケット6」の魅力の一つは、いろいろなアバターに変身して遊べることだ。気に入ったアバターを試着して買ったり、制作者とVR空間で直接会って喋ったりしてきた。 - 空に浮かぶ巨大原稿 “VR展覧会”でみた可能性と課題 マンガで解説
PCのデスクトップからでも、PC版VRからでも体験できるというVR展覧会「VRデビルマン展」を漫画家サダタローが体験。VR展覧会はリアル展覧会と何がどう変わるのか。 - アバターの見た目で人格が変わる? “VR版コミケ”に約13万人、バーチャルと現実を行き来する人々の可能性
VR空間で3Dアバターや3Dモデルを販売する「バーチャルマーケット」に注目が集まっている。3月に行われた同イベントには約13万人もの人が集まった。多くの人が“仮の姿”で集まる可能性とは。 - Facebook、メタバース「Horizon Workrooms」のβ版公開 「Oculus Quest 2」で世界中から参加可能
Facebookは「Oculus Quest 2」で参加するバーチャル会議室サービス「Horizon Workrooms」のβ版を公開した。ザッカーバーグCEOが立ち上げたメタバース製品グループのサービス。アバターとして自分のPCとキーボードを持ち込んで参加できる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.