“エルフ語”対応のAI翻訳サービス 「指輪物語」パロディーだけではなかった本当の目的
AI翻訳サービスを手掛けるオルツは、音声翻訳サービス「AI翻訳」が“エルフ語”に対応したと発表した。日本語を「指輪物語」シリーズに登場するエルフ(妖精)の言語に翻訳できる。ジョーク機能だが、独自の機械学習モデルを開発する研究の一環として作成したという。
AIを活用した翻訳サービスを手掛けるオルツ(東京都港区)は9月14日、Web会議中の発言を音声翻訳し、自動で字幕化するサービス「AI翻訳」が“エルフ語”に対応したと発表した。日本語を、海外ファンタジー小説「指輪物語」シリーズに登場するエルフ(妖精)の言語「シンダール語」に翻訳できる。同作をもじったジョーク機能だが、もともとは独自の機械学習モデルを開発する研究の一環として作成したという。
同社はAI翻訳などのサービスで自社製と他社製、両方の機械翻訳モデルを活用している。一方で自社製モデルの強化に向け研究を進めており、今回の機能はその一環として開発したという。架空の言語を選んだ理由については「あえて実用性やビジネスと関係ない人工言語に向き合うことで、研究の裾野を広げたかった」(オルツ)としている。
指輪物語は、文献学者でもある作家・J.R.R.トールキンが執筆。映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作で、作中に登場する架空の言語に文法や成り立ちなど詳細な設定が存在することで知られる。オルツは同作の言語を題材にした理由について、こういった背景が充実している一方で、手話や「エスペラント語」といった人工言語に比べて実用性が重視されておらず、研究することで新たな知見が得られると考えたためとしている。
新機能の開発に当たっては、小説に加えて作中言語に詳しい協力者からのアドバイスも参考にした。ただしシンダール語から他言語への翻訳については「話者が少ないため非対応」(オルツ)という。
今後、指輪物語に登場する別の言語「クウェンヤ」にも対応予定。ただしクウェンヤはすでに廃れた言語という設定で、作中でも言及が少なく、そもそも学習用のデータセットが調達できるか不明なため、協力者と研究を進めるとしている。
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