SBG孫社長「人間を単純作業から解放する」 AI×ロボット「スマボ」に意欲 「うなだれているPepperも応援する」
「単純作業を自動化して人間を解放すれば、より付加価値の高いクリエイティブな仕事に専念できる」――SBGの孫社長はこう話し、ロボットとAIをかけ合わせて10億人分の労働人口を獲得する構想を打ち出した。
「単純作業を自動化して人間を解放すれば、より付加価値の高いクリエイティブな仕事に専念できる」――ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は9月15日、オンラインイベント「SoftBank World 2021」に登壇し、こう語った。スマートフォンの略語「スマホ」になぞらえた自身の造語「スマボ」(スマートロボット)を使いながら、ロボットとAIを組み合わせたスマボで10億人分の労働人口を獲得する構想を打ち出した。
孫社長は、“Japan as No.1”と言われた1980年代に比べ日本の競争力が低迷したことに危機感を覚えたという。競争力を労働力×生産性と捉え、労働人口をロボットで補うことで日本の競争力を復活できると強調。加えて自動化や効率化を進めることで、人間はアイデア出しやデザインなどに専念できるという。
スマボはロボットの世界を一瞬で塗り替えるiPhone的な存在に
「24時間働くロボットは8時間労働の人間3人分に当たる。加えてAIを活用すれば生産性を3.5倍にできる」といい、1台のスマボで約10人分の競争力になると説明。国内に1億台導入すれば、10億人分の労働人口になると孫社長は見込む。同社の人型ロボット「Pepper」を引き合いに出して「(スマボが進めば)うなだれていたPepperも応援する」と笑いを誘う場面も。
孫社長はスマボをiPhoneに例えて「ガラケー一色だった日本にソフトバンクがiPhoneを導入した。当時はメディアも『iPhoneなんて売れない』と見ていて、専門家も非難ごうごうだった。しかしiPhone一発で世界が変わった」「日本の今までのロボットは(ガラケーならぬ)『ガラボ』だと思う。これからはスマボがロボットの世界を一瞬で塗り替える」と語った。
自動車の製造ラインや織物の生産などで活躍するガラボは、決まった動作を人間が全てプログラミングする必要があった。AIを活用したスマボは自ら学習して臨機応変に対応できるため、あらゆる分野に応用できるとして「(製造業だけでなく)あらゆる労働人口を置き換えていく」と意気込みを示した。
米Boston Dynamicsが「世界で最も進んでいる」
同社が2017年に設立した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)を通じて出資しているスマボ企業は18社で、世界でも類を見ないという。孫社長は出資企業の中で米Boston Dynamicsが「世界で最も(ロボット技術が)進んでいる」と評価。Boston Dynamicsの二足歩行ロボット「Atlas」がパルクールをする動画を紹介した。
製造業ではドイツの製造用ロボットメーカーAgile Robotsに出資。アーム型のロボットは、人の動きをまねしてモーション学習するためプログラミングが不要で、製造ラインの構築を2週間から4時間に短縮した事例もあるという。アームの先端は風船に触れた衝撃も感知でき、精密な作業も可能だ。
出資先は物理的な体があるスマボだけではない。米Automation Anywhereが手掛ける事務作業の自動化ソフトウェアロボット(RPA)は、数クリックでホワイトカラーの定型業務を自動化するbotを作成可能。ルーティン化した3分の1ほどの作業をbot化し、営業や企画に時間を割ける。SBGも導入済みで、数千のbotが動いているという。
出資企業はこの他、物流倉庫で荷物を運ぶロボットを手掛けるAutoStore(本社:ノルウェー)や、箱詰めを行うロボットを開発する米Berkshire Grey、医療現場で腹腔鏡手術を補助するロボットを製造する英CMR Surgicalなど。
企業に出資して口出しはしないという孫社長の組織モデル「群戦略」に合わせてスマボ企業への出資を進める。今後は日本の企業やユーザーにもスマボを広めることを目指す。
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