せりふの“あのキャラ度”をAI診断、ゲームシナリオ作りに活用 「ライター多数の現場も楽に」(2/2 ページ)
AIでキャラのせりふを分析し、言動をぶれを抑えるツールをバンダイナムコエンターテインメントの研究機関が開発。すでにライターが複数いるスマホゲームなどで試験運用が始まっているという。開発のキーパーソンに仕組みを聞く。
“らしさ”の秘訣は比較学習とデータの前処理
AIセリフ監督の自然言語処理モデルには基本的に、漫画やアニメ、ゲームなどにおける、そのキャラの過去の言動を学習させるという。ただしこれらのデータには、AIに「そのキャラらしい言い回し」を出力させるため、2通りの工夫を施している。
一つは、言動を再現したいキャラクターのせりふだけでなく、別のキャラクターが発言した、特徴が異なるせりふをひとまとめにし、AIに比較して学習させることだ。
例えばミライ小町の言動を再現する場合、基準となる文としてミライ小町による「みんな今日はありがとう〜〜!!」というせりふを入力。同時に“ミライ小町らしいせりふ”として、ミライ小町が過去にしゃべった「スタッフの皆さんもお疲れ様です〜」という文と、逆に“ミライ小町らしくないせりふ”として他のキャラが話した「ざっくり言えば言い訳するAIを作ったのです」という文を入力する。
こうすることで「スタッフの皆さんもお疲れ様です〜」という文をミライ小町らしいせりふとしてAIが認識。逆に「ざっくり言えば言い訳するAIを作ったのです」をミライ小町らしくないせりふとしてAIに学習させられるという。
2つ目の工夫は、学習元のデータが載っている媒体に合わせ、前処理を行うことだ。例えばミライ小町の場合、学習データとなるせりふはバンダイナムコ研究所が公式サイトに掲載している漫画や、公式SNSアカウントの投稿から集めている。
しかし、漫画の場合は他のキャラのせりふが混じる場合があったり、SNSの場合は絵文字や顔文字が混ざったりする場合がある。これらの情報はAIがどのように処理するか分からないため、状況に応じて削除する必要があるという。
必要なデータの目安は300件程度
ミライ小町の場合、こういった処理を施したせりふを、比較用も含め約300件学習させたという。しかし必ずしもこの量のデータが必要というわけではなく、場合によってはむしろ数を減らすことも検討することもある。
「多ければ多いほどよいわけではない。(キャラが複数いるゲームの場合)、主役と脇役で学習データにできるせりふの数がそもそも異なり、学習のバランスが崩れ、クオリティーに差が出ることもある。学習用データとしてそのキャラらしいせりふを精査できていれば、少ないデータで十分な可能性もある」(ライさん)
ローカライズでの活用も期待
すでにグループ内での活用が進むAIセリフ監督。今後はグループ会社以外の企業への提供を目指す他、長期的には多言語に対応し、翻訳されたせりふの分析・監修も可能にすることで、ゲームのローカライズにも役立てたいという。
「英語圏だとキャラの特徴的なセリフを監修できる人もいるが、言語によってはそういった業務ができる人がいない。一方で最近はゲームの数や、更新の頻度も多くなっている。この状況に、AIセリフ監督で対応できたらと考えている」(中野渡さん)
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