「電子教科書が使いにくい」「導入に時間がかかる」 NTT東西らが教育DXの新会社、解決したい3つの課題
NTT東日本、NTT西日本、大日本印刷が、教育のDXを手掛ける新会社「NTT EDX」を設立。大学や出版社を対象に、電子教科書の配信プラットフォームを提供する他、既存の教科書を電子化し流通させる支援事業を展開する。
NTT東日本、NTT西日本、大日本印刷(DNP)は10月5日、教育のDX(デジタルトランスフォーメーション)を手掛ける新会社「NTT EDX」(エディックス、東京都千代田区)を8日に設立すると発表した。大学や出版社を対象に、電子教科書の配信プラットフォームを提供する他、既存の教科書を電子化し流通させる支援事業を展開する。
代表取締役社長にはNTT西日本から金山直博氏が就任。株主はNTT東西とDNPで、資本金は1億4000万円。NTT東西がクラウド基盤やデータ活用技術、DNPが電子教科書の作成・配信ノウハウ提供する。
3社は2020年から京都先端科学大学や武庫川女子大学などと共同で電子教科書に関する実証を始めるなど、教育のデジタル化に携わってきた。しかし、電子教科書をより高機能かつリーズナブルに、また早期に全国の教育機関へ展開しようとすると、3つの大きな課題に直面したという。新会社設立には、その課題を克服する狙いがある。
電子教科書とWeb会議システムを併用しようとすると使いにくい
先述の2大学との実証で、電子教科書には「持ち運びが容易で場所を選ばず勉強できる」「学習時間が増える」「より多様なコンテンツを利用できる」「受けたい講義を選ぶ前に教科書を試読できる」などさまざまな効果があることが分かった。
一方で、オンライン授業の場面では課題も見えてきた。学生が使うシステムが統合されておらず、操作性に問題があったという。
大学には、学生に向けて講義の情報や教材を配信したり成績を通知したりする学習支援システム「LMS」(ラーニング・マネジメント・システム)がある。オンライン授業ではLMSに加え、Web会議システム、電子教科書を閲覧するシステムの3つを同時に使うこともある。
「それぞれバラバラなシステムなので、学生にとっては電子教科書はタブレットで開く、Web会議システムはPCで開くなど、幾つもデバイスが無いと授業を受けづらいということがある」(金山社長)
システムの導入に手間がかかり過ぎる
これらの課題解決に向け、NTT東西とDNPは21年5月、大学向けのデジタル教科書の配信プラットフォーム構築で連携すると発表。大学や出版社に向けたサービスの展開を強化したが、そこで新たな課題が発生した。
大学のDXを推進するには、電子教科書の配信プラットフォーム、ネットワークやサーバといったICT基盤をはじめ、さまざまなシステムの導入と調整が必要だ。NTT東西とDNPはこれまで、大学や出版社などのクライアントの要望に合わせて、配信システムや基盤をオーダーメイドのように個別に提供してきた。
この結果、各システムの導入などに時間がかかり、実運用に入るまでのリードタイムが長くなった他、コストも肥大化してしまったという。また、クライアントからも「できる限り1つのプラットフォームとしてまとめてほしい」との要望が挙がっていた。
教科書電子化の許諾を取れない
3つ目の課題は、出版社から教科書の電子化にあたる許諾を得られない点だ。京都先端科学大学、武庫川女子大学との共同プロジェクトでは、許諾を得られると想定していた教科書のうち約半数は電子化に至らなかったという。
「大学教員から出た電子化したい教科書のリクエストに基づいて、出版社へ個別に交渉に行ったが、なかなか許可が出なかった」(金山社長)
NTT EDXの立ち上げには、電子教科書をプラットフォームとして提供することで、(1)導入にかかる時間とコストの削減、(2)LMSやWeb会議システムの統合、(3)電子化の許諾獲得に向けた窓口になるなど、電子教科書に関する課題の解決を目指す。
金山社長は5日の記者発表会で、新会社のサービスの提供を通し、「LMSやWeb会議システムと電子教科書の仕組みを統合して学生の利便性を上げたい」と述べた他、今後の事業展開についても「電子教科書のシステムを、日本の大学の半数に利用してもらえるような活躍ができれば」と意気込みを語った。
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