Teslaでの長距離ドライブ、820km走って電費1000円いかないカラクリ:走るガジェット「Tesla」に乗ってます(7/7 ページ)
Teslaに乗り始めた山崎潤一郎さんが初の長距離ドライブ。なぜここまで燃費ならぬ電費が安いのか。その仕組みを明かします。
2020年代後半、バッテリーコストは半分になる?
Tesla Model 3は、2021年2月に大幅に値下げされました。例えば、ロングレンジ版は655万2000円から499万円(税込)へと一気に156万円以上値下がりしました。これこそ陳腐化の証左だろ、とお叱りを受けそうですが、これは陳腐化とは意味合いが異なると思っています。ましてや後述するバッテリーコストの下落が理由でもないと思います。
以下は筆者の推測です。値下げの最大の理由は、最新の上海工場が本格稼働したことによる合理化や納入部品のコストダウンが大きいのではないかと考えています。生産技術においても最先端を追求するTeslaのことですから、デジタルツインの手法で工場の徹底した合理化を実現し、全体最適化を実施した結果だと見ています。
米国生産時代のフリーモント工場は、GMとトヨタの合弁企業の建物を買収したものだったので、全体最適化にも限界があったのだと推測できます。工場の合理化が値下げの理由であるなら、陳腐化とは意味合いが異なります。それに、値下げ後もModel 3の中古車の価格は大きく変化していないようです。
もう1つ、陳腐化懸念があるとしたら、バッテリーコストの値下がりです。トヨタ自動車は、2021年9月7日、電池・カーボンニュートラルに関する説明会を開き、2020年代後半には、バッテリーコストの30%削減と電費の30%改善の合わせ技で、電動車のバッテリーに関連するコストにおいて実質的に約50%削減を実現すると発表しました。
これをそのまま、筆者のTesla Model 3に当てはめるとどうなるでしょうか。一説には、EVのバッテリーコストは、車両価格の30〜40%だそうです。仮に40%だとすると税抜き価格約463万円のうちバッテリーコストは、約185万円となります。これの七掛けが約130万円なので、2020年代後半のModel 3は、税抜き価格が約408万円です。そして、航続距離が30%改善するので、現状の580kmが、約750km以上となるわけです。
あくまでも筆者のModel 3を題材にした仮説ですが、今よりも約55万円安く買えて、しかも航続距離が1.3倍になれば、確かに陳腐化したといえます。とはいえ、今から7〜9年後の話なので、Model 3に限らず、クルマとしての下取り価格は、そもそも論で取るに足らないレベルになっているはずなので陳腐化を心配をするだけ時間の無駄ですね。
バッテリー価格は上昇すると見るのが自然
その一方で、自動車経済評論家の池田直渡氏は、今後バッテリー価格は上昇すると断じています。「EVの行く手に待ち受ける試練(前編)」で、原材料価格の高騰やバッテリー工場の先行投資などで「バッテリー価格は上昇すると見るのが自然である。少なくとも下がる要因はどこにも見当たらない」と述べています。
池田氏の言う通りであれば、バッテリーが要因による陳腐化の心配は杞憂に終わり、むしろ今の価格で購入できたのはラッキーということになります。ちなみに、現在、Model 3は値上がり傾向にあります。
以上の理由で、Teslaの陳腐化、つまり、ガジェット的クルマだからという理由で下取り価格が通常の下落水準から大きく乖離してしまう心配はないというのが筆者の見解です。では、次回をお楽しみに!
著者プロフィール
山崎潤一郎
音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla
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