EVの行く手に待ち受ける試練(前編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
電動化を進めようとすると、極めて高いハードルとしてそびえ立つのがバッテリーの調達である。バッテリーの調達に関しては、大きく分けて問題が2つある。ひとつはバッテリー生産のひっ迫、もうひとつはバッテリー原材料となる鉱物、とくにレアメタルの絶対的不足である。
このコーナーの読者は先刻ご承知とは思うが念のため、電動車とは、バッテリー電気自動車(BEV)、燃料電池車(FCEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、ストロングハイブリッド(HEV)、マイルドハイブリッド(MHEV)のすべてを含む言葉である。走行用モーターを備えるクルマは電動車である。
多分狂信的なEV教徒なのだと思うが、何人かこれを「電動車とはEVとPHEVのみのことをいうのが世界のスタンダードであり、HEVを電動車に含める日本はガラパゴス」などと繰り返し説明する人を見かけるが、耳を貸してはいけない。完全なウソである。
海外自動車メーカーの英文リリースを見ると、電動化は「Electrified」または「electrification」、電気自動車は「Electric car」と明確に使い分けられており、フォルクスワーゲンやボルボが生産する48V MHEVは、Electrifiedに分類されている。
証拠としてボルボグループのwebサイトの画像を添えておこう。ちなみにクドくなるのでボルボだけにしておくがフォルクスワーゲンであろうがポルシェであろうが言葉の使い方は一緒である。やれというなら何社でも紹介できる。
原文と筆者の翻訳も付けておく。なお原文との比較がしやすいように、少し気持ち悪いが、なるべく直訳調にしておく。
Volvo Cars is taking a bold lead with electrification in the auto industry. As the first major premium car brand to commit to a hybrid or full-electric powertrain for all our models, we aim to drive the automotive sector forward, improve the quality of the air in our cities and increase our success as a business.
ボルボカーズは、自動車産業の電動化を強くリードしています。世界で初めて、すべてのモデルをハイブリッドまたは電気のみで走るパワートレインにするとコミットした主要プレミアムカーブランドです。私たちの目的は、自動車セクターを前進させ、都市の空気の質を高め、事業的成功を向上させることです。
2025 50% of Volvo Cars’ sales volume to be fully electric by 2025.
2025 2025年までにボルボカーズの販売量の50%を電気自動車にします
1 million Volvo Cars has committed to putting one million electrified cars on the road by 2025.
100万台 ボルボは2025年までに(累計で)100万台の電動車を路上に置く(要するに販売する)ことを約束します。
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