ドコモの通信障害から考える「サブ回線」を持つ意味とは(2/2 ページ)
10月14日に発生したNTTドコモの通信障害は復旧までに時間がかかったこともあり、多くの人に影響を与えた。複数回線の契約はまだ一般的ではないものの、今ではより簡単に利用しやすくなっている。「サブ回線」を持つ意味について西田宗千佳さんが解説する。
サブ回線、eSIMにするか物理SIMか
とはいえ、課題はもちろん残っている。
サブ回線を用意するとして、それを「どう使うのか」という点だ。
古いスマートフォンを用意し、そちらに入れて「サブ回線用」にすることもできるだろうが、サブ回線のためにスマホを2台持ち歩き、どちらの充電も管理し続けられる人は、やはりちょっと特別な人かと思う。
メインのスマホ1台で対応するのが望ましい。トラブルを察知してサッと素早く回線を切り替える形がいいだろう。
手早くやりたいなら、やはりeSIMがいい。スマホの中で設定変更すれば良いので、分かってしまえば簡単だ。また、今だと2つの回線を同時に待ち受けられるので、切り替える必要すらない。
2枚のSIMカードを入れられて、どちらでも待ち受けできるスマホもあるが、日本では、一部のオープン市場(過去のSIMフリー市場)向けの製品に限られている。同時待ち受けなら「eSIM」の方が楽だろう。楽天モバイルやpovo2.0が有利なのは、eSIMでの契約がしやすいから、という部分もある。
ただ、結局一番の課題は「eSIM対応のスマホを用意すること」だ。すでに持っているスマホがeSIM対応ならいいが、そうでない場合、買い替えが必要になってくる。iPhoneの場合ならiPhone XS/XS Max/XR以降で対応しているが、Androidは国内向けの機種の場合、未対応のものが多い。楽天が積極的に対応端末をそろえているが、他の事業者に関してはまだこれからだ。SIMロックのないオープン市場向けのデバイスには対応製品も多く、GoogleのPixelシリーズなどがeSIM対応となっている。
実際問題、eSIMでなくても「サブ回線」運用はできる。サブ回線用のSIMカードを持ち歩いておき、必要な時に差し替えるのだ。サブ回線用のSIMカードとSIMピンを薄いケースなどに入れ、カバンの中などに入れておくのがいいだろう。
どちらにしろ、1台のスマホで「サブ回線運用」をする場合には、スマホ側は「SIMロックがかかっていない」ことが前提となる。これはeSIMでも物理SIMでも同様。2つの回線事業者を併用する場合、SIMロックがかかっていると使えない。
最近購入した機種であればロックがかかっていないこともあるし、10月1日以降は原則としてSIMロックはかからない形で出荷されることになった。だがその前に携帯電話事業者から買ったものである場合、SIMロックを解除しておく必要がある。
Wi-Fiも含め「複線化」は柔軟な発想で
筆者は「複線化」に対し、また別の発想もあると思ってる。何が何でも「スマホの中で携帯電話回線を使う」ことにこだわる必要はない。
筆者は複数回線を契約していると述べたが、実のところ出歩く時、常にスマホを何台も持ち歩いているわけではない。メインのスマホ1台と「セルラー版のiPad Pro」を持ち歩いている。この両者で使う事業者を分けることで、どちらかの調子が悪かったり、回線の入りが悪い時でも、もう一方で対応できる……という体制にしているのだ。
そもそもは「iPad Proでどこでも通信を使いたい」という発想だったのだが、同時に、スマホ側の回線がダメなとき、iPad側からWi-Fiでつないだり、逆にiPad側がダメな時にスマホをテザリングしたりする使い方をしている。費用はそれなりにかかっているが、「スマホをサブとして2台持ち歩く」「使わないサブ回線のSIMを持ち歩く」よりは、ニーズ的にもすっきりしている……と自分では考えている。
もちろん、片方は別にiPadである必要はない。別のタブレットでもいいし、4Gや5Gを搭載したPCでもいいだろう。
もっとお金を使わない方法もある。
立ち寄り先に公衆Wi-Fiがあるなら、それを使うことを考えても良いはずだ。駅やコンビニ、携帯電話ショップなど、その気になればけっこういろいろな場所にある。都会のように移動しやすい場所に有利な考え方ではあるが、コンビニや携帯電話ショップを視野に入れれば、歩いて移動できる範囲にあることも期待しやすいのではないだろうか。
今回起きたNTTドコモのトラブルは、純粋に「ドコモ側のミス」によるものだった。だが、「回線が不通になる」ことは、災害時などにも十分考えられる。
その時は仕事や待ち合わせのためでなく、安全・安心のために通信が必要になるだろう。そこでこそ「複線化」の発想は必要になる。サブ回線の用意もあっていいし、「近くでWi-Fiが使える場所はどこか」を頭に入れておく必要もある。どれも使えないかもしれないが、逆にいえば、どれかで少しでも通信ができて、安否確認できればそれでいい。
この機会に、「自分はどのくらい『オフライン』の時間があってはいけないのか」「災害時も含め、どうしても回線が必要な時はどこに行くべきか」を考えておいてもいいのではないだろうか。
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