Photoshopに“作者証明”機能 メタデータを剥がされても復元可能、NFTマーケットとも連携
米Adobeが推し進めるデータ改ざん防止のネットワーク「コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)」のアップデートとして、「Photoshop」で制作したコンテンツに制作者の情報を埋め込めるようになった。他のAdobeアプリにも順次拡大するという。
米Adobeは10月26日(現地時間)、クリエイターが「Photoshop」で制作したコンテンツに制作者の情報を埋め込めるようになったと発表した。同社が推進するデータ改ざん防止のネットワーク「コンテンツ認証イニシアチブ」(CAI)の一環。NFT(代替不能なトークン)のマーケットプレースに出品すると、埋め込んだメタデータから制作者の情報を取得し表示するという。
この機能は「コンテンツクレデンシャル」というもので、写真やデジタル作品、動画、音楽などあらゆるデジタルコンテンツに作者の情報を埋め込み、そのコンテンツの作者や帰属先、手が加えられた編集の履歴などを追跡できる。メタデータの情報はCAIの専用サイトから確認でき、Photoshopなど対応ソフトで編集した場合、加工前と加工後を比較することもできる。
メタデータの保存先はローカルとクラウドから選択でき、クラウドに預けると作品からメタデータを引き剥がされた場合でも、CAI側でフィンガープリント(作品の情報を圧縮した短い文字列)を持っているため復元が可能という。ただし、ノイズやリサンプリング耐性は高いものの、元画像が分からなくなるような重度の加工が施された場合はその限りではない。
CAIには現在375組織が参加。当初から米Twitterと米New YorkTimesが参加している他、英Arm、米Microsoft、米Qualcommといったテクノロジー企業、英BBC、仏AFP通信などの報道機関、学術機関、人権団体などが加盟。日本からはニコンが参加している。より参加企業を募るべく、米Linux Foundationの下に設立された「C2PA」(コンテンツの来歴と真正性についての連合)という標準化組織の立ち上げも支援している。
AdobeでCAIを担当するアンディー・パーソンズさんによると、デジタル作品だけでなく、スマートフォンやカメラで撮影した写真にメタデータを埋め込むといった構想も検討しているという。Qualcommとは既にデータのエンコードをデモしている。Photoshopの他、他のAdobeアプリでも情報を埋め込めるよう順次対応を進める。
NFTマーケットにアップされた作品が本人のものか確認可能に
同社の年次カンファレンス「Adobe MAX 2021」では、この真正性を使い、クリエイターの参入が続くNFT(代替不能なトークン)への対応も発表された。作者のプロフィール以外に、SNSのアカウントや暗号資産ウォレットのアドレスも埋め込めるようになる。
「OpenSea」をはじめとした「KnownOrigin」「Rarible」「SuperRare」などのNFTのマーケットプレースと連携。これらに作品を出品すると、埋め込まれた情報からマーケットプレース側がアーティスト情報を取得し、表示する。
NFTを発行した際にひも付けられたウォレットと、コンテンツにひも付けられたウォレットが同一かを確認できるため、投稿者が作者本人かどうか購入者が確認できるようになるという。
AdobeのNFT対応はPhotoshopだけでなく、同社のクリエイターコミュニティー「Behance」にも展開。Behance内にNFTアートを一覧表示するタブをプロフィールに導入。アカウントに仮想通貨ウォレットをひも付けると、作成したNFTがBehanceのプロフィールに追加される他、プロジェクトページに詳細情報とNFTを表示。制作プロセスの紹介もできる。「Polygon」「Solana」「Flow」「Tezos」などのブロックチェーンをサポート予定という。
パーソンズさんは「CAIでもブロックチェーンの活用を検討している」という。「CAIモデルの信頼を裏付けるために使用する。例えば、パブリックブロックチェーン上のタイムスタンプや証明や、ブロックチェーンを活用した真正性ソリューションの強力な特徴になる」
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