「ユニークすぎて競合なし」製品を続けざまに投入 撮影の総合商社と化したDJIのパワーを探る:小寺信良のIT大作戦(3/4 ページ)
このところ、DJIの新製品が矢継ぎ早にリリースされている。いずれも直接の競合が見当たらない独特のものだ。
自社製品をベースに発展させる手法
一般にカメラメーカーだと、普通は「ヒット商品の次」に悩むところである。製造コストを下げてスペックアップということで、ボディーは変わらずの「マークII」だったりと、なかなか大胆な一手が打てない。そんな視点で見てみると、DJIが面白いのは、自社の商品を下敷きにして、設計から大胆に見直した次の一手を繰り出せるところである。
2015年発売のジンバルカメラ「Osmo」は、その後2018年に「Osmo Pocket」として超小型のハンディジンバルカメラに発展した。小型のカメラは、当時はネットニュース媒体が動画コンテンツに切り替わっていく時期であり、動画取材に便利だということで、多くの同業者がこれを購入したのを覚えている。
2018年は、DJIのカメラ開発が一気に進んだ年で、同社のドローンで初めてズームレンズを搭載した「Mavic 2 Zoom」、ハッセルブラッドと共同開発した1インチセンサーカメラを搭載した「Mavic 2 Pro」の2モデルを同時期にリリースしている。「ヘッドが動く超小型カメラ」という分野では、もはや競合がない状況になった。なおDJIは、2017年にハッセルブラッドの株式の過半数を取得し、傘下に加えている。
2020年には、「Osmo Pocket」をさらに発展させ、「DJI Pocket 2」としてリリースした。注目は、音声の強化だ。ボディーの4方向にマイクを設置し、任意の方向にオーディオの指向性を向ける機能を搭載した。さらに「Creatorコンボ」として、ワイヤレスマイクを同梱した。これまでのDJIのカメラは、どちらかというとアクションカメラに属していたところがあり、音声収録に弱いところがあったが、「Osmo Pocket」で切り開いた動画レポート用途や、Vlog用途に音声を強化してきた。
ジンバル付きカメラは、これにとどまらなかった。2021年10月、プロ向けジンバルRONINの技術と、Inspireシリーズで自社開発してきたZenmuseの技術を合体させ、フルサイズ8Kジンバル一体型シネマカメラ「Ronin 4D」をデビューさせた。
ドローンで鍛えたLiDARセンサーによるフォーカスシステムやワイヤレス映像伝送システムを搭載した、モジュラーカメラである。マウントはDJIオリジナルのDLマウントで、レンズはZenmuse X7用の24mm、35mm、50mmがそのまま使える。単品で15万〜17万円ぐらいするレンズ群である。
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