「ユニークすぎて競合なし」製品を続けざまに投入 撮影の総合商社と化したDJIのパワーを探る:小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)
このところ、DJIの新製品が矢継ぎ早にリリースされている。いずれも直接の競合が見当たらない独特のものだ。
2019年に投入した「Osmo Action」の後継機は、2021年11月の「DJI Action 2」ということになる。カメラモジュールとモニター+バッテリーモジュールが合体・分離するカメラで、ジンバルはないが、強力な手ブレ補正と傾き補正で、多彩な撮影に対応する。また Dual-Screenコンボに含まれるモニターモジュールと組み合わせると、やはり4方向のマイクが使用できる。
合体・分離する小型カメラシステムとしては、先にInsta360から「Insta360 One R」が出ている。ベースユニットとしてバッテリー部が必要で、最終的にはGoProっぽい形になるが、カメラユニットが撮影用途に合わせて自由に交換できる。
一方DJI Action 2はカメラユニット内にもバッテリーがあり、単体でも動く。また合体すると、「縦型」のカメラとなる。同じアクションカメラでありながら、「脱GoPro」を図ったデザインといえる。
またDJI Action 2と同時期に「DJI Mic」も発表されている。これはトランスミッタ一体型マイク×2とレシーバーのセットで、最大250mの伝送を可能にする。ワイヤレスマイクはすでにDJI Pocket 2のオプションで開発済みであり、それを発展させたものとも想像できる。
デュアルのワイヤレスマイクという意味では、先にオーストラリアのマイク専門メーカーRODEから、「Wireless GO II」という製品が出ているが、プロに近い一部のユーザーにしか知られていない。DJIがマイク事業にも参入したことで、また一層活気づくことだろう。
ドローンの最新モデルとしては、11月5日に発表された「Mavic 3」がある。これもハッセルブラッドと共同開発したマイクロフォーサーズのメインカメラとターゲット補足用ズームレンズの、デュアルカメラシステムになっている。デュアルカメラ部の重量はわずか12.5gしかなく、これまでのカメラの常識を打ち破る。
ここまでの流れを見てもお分かりの通り、DJIはドローンの技術を分離して、カメラ、ジンバル、カメラ付きジンバルと、それぞれの分野で無駄なく個別の製品に発展させて来た。無理に方向性を曲げたりせず、時代の流れを見ながらうまくそれに乗る、しかも商品企画からかなりの短期間、おそらく1年程度で製品を完成させている。これは従来の日本的ものづくりのペースから考えれば、恐るべき速度だ。
プロからコンシューマーまで幅広いうえに、機能的にユニークすぎて競合があまりない機材がほとんどである。競合する部分では、メーカーの知名度で圧勝する。加えて撮影者としては、メカがギュインギュイン動く面白さがある。
カメラといえばまだまだ日本のお家芸のような印象があるが、実際にはミラーレス以外の、チャレンジングな領域の開発がほとんど止まっているのが事実だ。ミラーレスや業務用カメラで撮れない隙間を埋めるGoPro、という構図が続いてきたが、プロ・アマ問わず今後は撮影機器メーカーとして、DJIの名前は外せなくなっていくのではないだろうか。
11月17日より、日本で国際放送機器展Inter BEEが開催されることもあり、これから年末にかけて撮影機材のニュースが盛り上がることになる。「面白い」はまだ日本に残っているだろうか。
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