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「ガバメントクラウド」に国産IaaSが不在だったワケ さくら田中社長に聞く日本ベンダーの課題(2/3 ページ)

日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」。海外IaaSのみを採択したデジタル庁に対し「日本の産業を育成しないのか」といった声も出ている。なぜ国産IaaSはガバメントクラウドになれなかったのか、さくらインターネットの田中邦裕社長に見解を聞く。

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国産IaaSに合わせて基準を下げるべきではない?

 地方自治体や政府横断の基盤として活用が検討されるガバメントクラウド。田中社長はデジタル庁が定めた選定基準について、そもそもコンピューティングリソース、セキュリティ、マネージドサービスの数など、さまざまな面で海外IaaSでないと達成できないものだったと話す。

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デジタル庁が公開しているガバメントクラウド選定基準の一部

 「そもそも日本のパブリッククラウドは規模が小さすぎて、スケール(サーバの台数・能力を状況に応じて増減させること)しない設計になっている。サービスの質の問題もある。一般消費者が使っているシステムを法人が使う『コンシューマライゼーション』があると質が上がるが、非ネット企業など、法人向けのサービスしか提供していないようなベンダーだとこれが難しく、セキュリティ基準などを乗り越えにくい」

 ひろゆきさんが国産IaaSの例としてさくらインターネットを引き合いに出したのも、同社が個人向けサービスも提供している背景を踏まえたものだと分析する。ただし、日本の事業者が参入できるよう、ガバメントクラウドの選定基準を甘くするのは、むしろ国産IaaSの成長に逆効果だと話す。

 「国産だからいいというのが強調されすぎたり、ITで鎖国したりするのは良くない。(AWSやGCPに)対抗できるような力量のある事業者が日本で出ることの方が重要。そういう意味では、われわれはすごく重いミッションを抱えていると考えている。最終的にはひろゆきさんの言うように、国のデータを守れる企業が日本に2〜3社出てくるのが必須」

 一方でこの基準について、調整の余地がある部分も存在すると考えているという。

 「常に稼働しなければいけないシステムについてはデジタル庁が定める基準は重要。ただ『全部(のシステムの基盤に)それが必要か?』という議論もある。機能面や要求仕様が簡易的になった“ライト版”のような基準が出てきて、一部のシステムはそれでも構わない、という状況になってほしいと考えている」

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