「ベンダー依存を肯定」実は多数派 その背景は? 「SmartDB」提供元が調査
特定のITベンダーへの依存にプラスの効果を見いだしているITシステム決済者は過半数以上──SaaS「SmartDB」を提供するドリームアーツがこんな調査結果を発表した。ベンダー依存に肯定的な側面を見いだす企業の特徴とは。
特定のITベンダーへの依存にプラスの効果を見いだしているITシステム決済者は過半数──ノーコード開発機能などを備える業務支援SaaS「SmartDB」を提供するドリーム・アーツは11月25日、こんな調査結果を発表した。
従業員1000人以上の会社に所属する決裁者とそのアドバイザー計1000人に「ベンダーに頼ることはプラスの側面があると思うか」と聞いたところ、全体の57%が肯定。「ベンダーとの付き合いで得したこと」を聞いたところ、65%が「基本的に全てお任せで進められるので、仕事が楽」と答えた。
このうちベンダー頼りを肯定した人にその理由を複数回答で聞いたところ、最も多かったのは「専門分野を超えてベンダーのアドバイスを受けられる」(56.2%)。2位は「自社でIT人材を獲得・育成しなくていい」(40.1%)、3位は「経営に関してベンダーと協力できる」(30.6%)だった。上位にはこの他「大きな問題が発生したときに組織内で責任問題に発展しない」(8位、14.5%)、「多くを内製化するのは現実的に不可能だ」(9位、14.2%)という回答もあった。
調査では、主要ベンダーを変更したことがある企業が全体の2割程度にとどまることも分かった。過去に主要ベンダーを変更したことがあるかを聞いたところ「変える発想をしたことがない」が11.3%、「変えたいと思ったことがない」が32.5%、「変えたいと思ったことはあるが、実際には変えていない」が35.9%だった。
この結果について、ドリームアーツの金井優子さん(社長室コーポレートマーケティンググループ ゼネラルマネージャー)は「(ベンダーに頼ることで)専門家からのアドバイスを受けるのは問題ないが、ベンダーへの“丸投げ”につながる他、IT人材の育成や獲得が進まないなどの危険がある」と指摘した。
「依存」と「自立」…… IT決裁者のジレンマ
一方で、ベンダーへの依存度が高い企業も、本当は自立したITシステムを持ちたいと考えている可能性も明らかになった。同じ調査対象者に「頼りたい理想のベンダー像」を聞いたところ、1位は「自社の自立を促してくれる」(32.5%)に。2位は「魅力的で的確な提案をしてくれる」(23.4%)、3位は「責任感が強く頼りになる」(13.6%)だった。
併せて現場が自ら業務をデジタル化することへの見解を聞いたところ、全体の64%が「いいと思う」「どちらかといえばいいと思う」と回答。その理由を自由回答で聞いたところ「外部依存体質だと社内にノウハウが残らない」「ITリテラシーは全社員に必須」などの答えが出た。
金井さんはこれらの結果について「IT決裁者も(ベンダーへの)依存と自社の自立でジレンマを抱えているのではないか」と考察。「新しいベンダーとの取引が始まった理由」という質問では、「自社の変革のパートナーになってくれそうだと思った」という回答が41.3%で上位だったことから「ベンダーには良いサービスや『言ったことをそのままやってくれること』だけではなく、一緒に改革をしていけるパートナー性が求められている」と分析した。
とはいえ、こういったベンダーを見極めるには、企業や決裁者自身にもITリテラシーが必要だ。金井さんは調査結果をこうまとめた。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)がまだまだバズワードである中、これを飯の種にしているベンダーも多い。誠実なアドバイスやサービスを提供するベンダーもいるが、それを見極めるのはユーザー企業。不健全なベンダー依存から脱するには、きちんと企業がデジタルリテラシーを身に付けないといけない」
調査は10月28日から29日にかけて実施。ITシステム企業を除く、従業員1000人以上の会社に所属する決裁者とそのアドバイザー計1000人にWebでアンケートを取った。
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