「他市の教員にうらやましがられる」──小中学校のICT基盤をクラウド化、教員もPC持ち出し可能に 独自施策でAzure移行した埼玉県鴻巣市(2/5 ページ)
「GIGAスクール構想」に先駆けて教育現場のICT化を進め、公立小中学校のシステム基盤をフルクラウド化した埼玉県鴻巣市。教師のワークライフバランス改善や、生徒の学習環境の整備にも貢献したクラウド移行はどのように成し遂げられたのか。
「自庁式(オンプレミス)ではシステムの運用や更改に多くの人手やコストを要するが、クラウドならこれらを節約できる他、機器の故障や停電、設備点検などによるシステム停止を避け、より可用性を向上できると考えた」
もう1つは、外部からのアクセス性の改善だ。鴻巣市ではこれまで、生徒の個人情報などの漏えいを防ぐため、教員が普段教務で利用するPCは、学校外へ持ち出せないよう厳しく制限していた。
しかし教員の中には、家庭の事情などでやむなく自宅で仕事をしたり、休日出勤したりせざるを得ない者もいるという。こうした教員の負担を軽減してワークライフバランスを改善するには、リモートワーク環境の整備が不可欠だった。
学校で学ぶ生徒たちも、自宅のネットワーク環境からインターネット経由で学習システムにアクセスできれば、より学習効果が高まる。そのためにも、もともとインターネットアクセスを前提としているクラウドを活用する必要があった。
「教職員や生徒が場所を問わず、いつでもシステムにアクセスできる環境を実現したいと考えていた。そのためにはクラウドの方が自庁式より明らかに有利だった」
そこで鴻巣市は早速、クラウドベースの教育ICT基盤の提案を公募。複数のベンダーがこれに応じた中で、同市が最も要件を満たしていると判断して採用したのが、SIerの内田洋行(東京都中央区)が提案した「Microsoft Azure」を活用する案だった。
関連記事
- 開発環境をAzureに移行したらテレワーク中の出社が減りました 「オンプレはもう限界」──ゲーム企業が成し遂げたクラウド移行の舞台裏
開発環境をクラウド化したゲーム企業。Azureを中心に、開発基盤をマルチクラウドで構築した結果、トラブル対応の手間が減り、テレワーク中の出社が少なくなったという。“出社が減るクラウド移行”の舞台裏を中心人物に聞く。 - 「アマゾンって通販のやつ?」な“昭和企業”がAWS移行できたワケ 「白い恋人」製造元の情シス奮闘記
「アマゾンって通販のやつ?」が経営層の認識だった、「白い恋人」の製造元・石屋製菓。クラウドの知見に乏しかった同社のAWS移行を成功させたのは、2018年にできたばかりの情シス部門だった。 - 10倍に膨れたAWS運用費をどう減らす? ユーザー急増のnoteが挑む「コスト削減作戦」の裏側
巣ごもり需要によってユーザーが急増、これに伴い提供基盤であるAWSの運用コストも約10倍になったというnote。膨れ上がったコストの削減に取り組む「SREチーム」に、無駄を削減する具体的な手法を聞く。 - 年末調整で負荷急増、人事SaaSの悩みとどう戦う? “11月月初の憂鬱”に挑む企業のクラウドインフラ
タイムカード機能や年末調整用の書類を集める機能を備えた人事向けSaaSを提供するラクラス。年末調整を控える11月月初に負荷が集中する課題を抱えていたが、各サービスのデータベースや提供基盤をフルクラウド化して解決したという。 - 急なDXでクラウド基盤がスパゲティ化した話 リラクゼーション事業者の苦悩と打開策
業務のデジタル化を急速に進めた結果、データ分析基盤の構成が複雑化し、期待していた通りに使えなくなってしまったリラクゼーション事業者のりらく。データ分析基盤の機能を取り戻すため、同社が進めるクラウド活用とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.