「他市の教員にうらやましがられる」──小中学校のICT基盤をクラウド化、教員もPC持ち出し可能に 独自施策でAzure移行した埼玉県鴻巣市(3/5 ページ)
「GIGAスクール構想」に先駆けて教育現場のICT化を進め、公立小中学校のシステム基盤をフルクラウド化した埼玉県鴻巣市。教師のワークライフバランス改善や、生徒の学習環境の整備にも貢献したクラウド移行はどのように成し遂げられたのか。
「学術情報ネットワーク」との接続性がAzure選定の決め手に
鴻巣市がAzureを採用した理由は2つある。1つは同サービスが、国立情報学研究所(NII)が構築・運用する広域ネットワーク「学術情報ネットワーク」(SINET)と専用線で直接接続できるためだ。
SINETは、全国のさまざまな大学や研究機関が、学術研究のための情報流通などを目的に参画している通信環境。全国どこからでも最大100Gbpsで通信できることなどが特徴で、鴻巣市は実証事業という形で活用している。教育委員会が導入し、Azureと接続する例は鴻巣市が初という。
SINETを採用したのは、通信の安定性やセキュリティを確保するためだ。新井さんによれば、教育ICT基盤のフルクラウド化に際しては、生徒の個人情報をはじめ校務で取り扱う情報を漏えいやサイバー攻撃から守るため、通信の品質だけでなくセキュリティ対策にも気を配る必要があったという。
「SINETはネットワーク品質が安定しており、かつL2VPN接続が無料で利用できる。インターネットへのローカルブレイクアウト(拠点に直接インターネットにアクセスできる回線を用意し、特定サービスのトラフィックは直接インターネットと送受信する仕組み)と比べるとセキュアで安定した通信環境を使えると考えた」
鴻巣市がAzureを採用したもう1つの理由はコストだ。Azureは専用線サービス「ExpressRoute」を使うことで低コストでSINETと接続できるため、通信品質やセキュリティとコストを両立しやすかったという。
こうした背景もあり、鴻巣市は独自の閉域網を新しく構築し、市内の小中学校や市教育委員会からはここに直接接続する仕組みを採用。この閉域網とSINETを接続し、さらにSINETとAzureの間は1GbpsのExpressRouteでつなぐことで、SINETを活用したエンドツーエンドのクラウド接続を実現した。
【編集履歴:2021年11月29日午後1時07分 当初、「19年からは全国の教育委員会傘下にある公立小学校・中学校も利用可能になっている。これを踏まえ、鴻巣市は公立小学校・中学校における初の事例として、SINETの導入を決めた」としましたが、追加の取材に基づき「鴻巣市は実証事業という形で活用している。教育委員会が導入し、Azureと接続する例は鴻巣市が初という」に変更しました】
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