自動運転機能を持つ白杖、米スタンフォード大が開発 センサーで障害物を検知し、車輪で誘導:Innovative Tech
米スタンフォード大学の研究チームは、自動運転機能を持つカスタム白杖を開発。4種類のセンサーや左右に回転する車輪を搭載。周囲の障害物を検知し、車輪を回転させることでユーザーをナビゲーションする。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米スタンフォード大学の研究チームが開発した「Multimodal sensing and intuitive steering assistance improve navigation and mobility for people with impaired vision」は、視覚障害者の歩行補助を強化する拡張した白杖だ。
白杖の手元には4種類のセンサー、先端には左右に回転する車輪を搭載。周囲の障害物を検知し、車輪を回転させることでユーザーをナビゲーションする。
視覚障害者をナビゲーションするには、衝突回避や屋内外の道案内、重要な物体の位置特定の3つの主な課題がある。一般的には白杖や盲導犬を活用するが、これらでは未知なるルートを案内するのは難しい。
これら問題を解決するために、多様なセンサーと触覚フィードバックを備えたカスタム白杖を提案する。白杖に取り付けたセンサー類には、LIDARやカメラ、GPSアンテナ、慣性計測ユニット(IMU)が含まれる。 LIDARやカメラ、IMUでユーザーの位置や姿勢、障害物までの距離を推定し、GPSで屋外の環境マップを取得する。
ユーザーへの触覚フィードバックのために、白杖の先端にモーター駆動のオムニホイールを取り付け、地面に対して横方向にトルクを加えることでユーザーを左右に誘導する。このフィードバックは、ユーザーによって強めたり、プッシュボタンで止めたりが可能で、歩行速度を自由に調整できる。
実験では、障害物のある屋内外で行った。その結果、屋内外どちらでも、初心者や熟練者問わず、白杖よりもカスタム白杖を使ったときの方が、より短い時間と距離、より少ない接触回数で目的地まで歩けた。
また歩行速度も、初心者は38%、熟練者は22%の向上を示した。振動と音声フィードバックとの比較では、振動よりも今回提案の車輪の方が短時間で目標方位角に到達し、音声よりも車輪の方が目標の方位角に正確に到達する結果を示し、その有効性を実証した。
Source and Image Credits: Patrick Slade, Arjun Tambe, and Mykel J. Kochenderfer, “Multimodal sensing and intuitive steering assistance improve navigation and mobility for people with impaired vision”, Science Robotics, 13 Oct 2021, Vol 6, Issue 59, DOI: 10.1126/scirobotics.abg6594
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