「決裁と会計のシステムが別々」で業務にムダ発生 縦割り設計に悩んだ三井不動産がクラウドでスッキリするまで(1/2 ページ)
決裁システムと会計システムが分断されており、同じデータを複数回入力しなくてはいけないなど無駄な業務に悩んでいた三井不動産。しかし、クラウドを活用したシステムを刷新することでこれを解消したという。同社が進めたシステム刷新プロジェクトとは。
業務の関連性が高いのに、縦割りシステムのせいで連携ができない──こんな悩みは多くの企業に付き物だ。三井不動産もそんな企業の一つで「総務部が所管する決裁システムと経理部が所管する会計システムが分断され、各事業部の利用者はこれらのシステムを別々に利用する必要があった」と、同社の山本将人さん(DX本部DX一部技術主事)は振り返る。
業務によっては同じデータをシステムごとに2回入力しなければならないなど、多重入力が効率化の妨げになっていたという。
しかし、2019年にこれを刷新。従来はオンプレミスだったところ、Azureや各種SaaSなどを活用してフルクラウド化し、決裁・会計システムの連携性を高めた結果、受発注や会計の業務量を35%削減できた他、働き方の改善にもつながった。
分断されていたシステムの連携性を改善し、業務効率化を実現した三井不動産のクラウド移行はどのように実現したのか。ガートナー ジャパンのオンラインイベント「ガートナー IT IOCS コンファレンス」(12月1〜2日)で山本さんが解説した。
DX本部主導でプロジェクト発起 きっかけはハードウェア更改
プロジェクトが始まったのは16年。きっかけはハードウェアの保守期限切れという。当初は機器の入れ替えも視野に入れていたものの、当時使っていたハードウェアがもともとは08年に導入し、12年に更改したものだったことから「今回はバージョンアップではなく、システムを入れ替えよう」と決定。山本さんが所属する部署「DX本部」を中心にプロジェクトが立ち上がった。
クラウドの活用を決めたのは、もともと三井不動産が社内システムのクラウド化を進める方針だったためだ。すでに「Salesforce」「Sansan」といったSaaSの利用やその検討が始まっていた他、IaaSに移行するサーバも増えつつあったため、新システムもクラウドを活用することに決めた。
「使いやすいシステム」目指し総務・経理・DX本部が横断で協力
プロジェクトの目的は主に2つ。一つは分断されていたシステムの連携性を上げ、業務を効率化することだ。いくらクラウドを導入し、システムを刷新しても、従来通り2つのシステムで連携が取れていないのでは意味がない。
そのため今回のプロジェクトには総務や経理部以外にも、DX本部が参加。業務の切り分けや設計の判断に携わることで、社員にとって使いやすいシステムを目指したという。
もう一つは紙の削減だ。旧システムは紙の利用が前提で、こちらも業務が煩雑化する一因になっていたため、刷新を機に改善したかったという。
関連記事
- 年末調整で負荷急増、人事SaaSの悩みとどう戦う? “11月月初の憂鬱”に挑む企業のクラウドインフラ
タイムカード機能や年末調整用の書類を集める機能を備えた人事向けSaaSを提供するラクラス。年末調整を控える11月月初に負荷が集中する課題を抱えていたが、各サービスのデータベースや提供基盤をフルクラウド化して解決したという。 - 「他市の教員にうらやましがられる」──小中学校のICT基盤をクラウド化、教員もPC持ち出し可能に 独自施策でAzure移行した埼玉県鴻巣市
「GIGAスクール構想」に先駆けて教育現場のICT化を進め、公立小中学校のシステム基盤をフルクラウド化した埼玉県鴻巣市。教師のワークライフバランス改善や、生徒の学習環境の整備にも貢献したクラウド移行はどのように成し遂げられたのか。 - 急なDXでクラウド基盤がスパゲティ化した話 リラクゼーション事業者の苦悩と打開策
業務のデジタル化を急速に進めた結果、データ分析基盤の構成が複雑化し、期待していた通りに使えなくなってしまったリラクゼーション事業者のりらく。データ分析基盤の機能を取り戻すため、同社が進めるクラウド活用とは。 - まるで“SIer版ヤシマ作戦” 「エヴァ」公式アプリを配信基盤含め1カ月で開発 エンジニア2人の失敗できない挑戦記
リリースは1カ月後、プロジェクトに参加するエンジニアは2人という状況で「シンエヴァ」公式アプリの開発に挑んだSIer。仕様や配信基盤もほぼ決まっていない中、なぜ1カ月でリリースにこぎつけられたのか。2人が挑んだ“SIer版ヤシマ作戦”を探る。 - 「アマゾンって通販のやつ?」な“昭和企業”がAWS移行できたワケ 「白い恋人」製造元の情シス奮闘記
「アマゾンって通販のやつ?」が経営層の認識だった、「白い恋人」の製造元・石屋製菓。クラウドの知見に乏しかった同社のAWS移行を成功させたのは、2018年にできたばかりの情シス部門だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.