「崖から落ちたけど、壁にナイフを刺して何とか助かったぜ…」を体験できるVR、東京電機大が開発:Innovative Tech
東京電機大学松浦研究室の研究チームは、人が崖から滑落する際に、助かろうとナイフを斜面に突き立てて停止する動作を再現したVR触覚システムだ。落下から崖をナイフで刺し、しばらく引きずられて停止するまでの疑似体験を提供する。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
東京電機大学松浦研究室の研究チームが開発した「滑落中の崖面にナイフを刺して停止するマンガ物理学的MRシステム」は、人が崖から滑落する際に、助かろうとナイフを斜面に突き立てて停止する動作を再現したVR触覚システムだ。落下から崖をナイフで刺し、しばらく引きずられて停止するまでの疑似体験を提供する。
システムは、HMD(Oculus Quest)やナイフ型デバイス、崖面デバイス、Arduino Uno、PCなどで構成する。ナイフ型デバイスには刺すと刃が柄の中に引っ込む玩具のナイフを採用。ナイフの柄の底面には圧力センサーを搭載しており、刃が柄に収まった際の状態を数値で捉えられる。
崖面デバイスは、約36.5×15.1cmの前面(面の斜度は約80度)をもつベルトコンベヤーと、それを回転させるためのDCモーターで構成する。ナイフ型デバイスを崖面デバイスに押し当てたときの圧力値をベルトコンベヤーの上方への移動(回転)の速度として反映する。ナイフを崖に刺すと、上に動く崖が止まる仕組みだ。
VR上では、ナイフ型デバイスの圧力センサーの値に基づき、HMDで提示する崖の移動速度(すなわちプレイヤーの滑落速度)を定め、プレイヤーに崖面、ナイフ、自身の手などを含む映像を提示する。
ユーザーはナイフ型デバイスを手に持ち、崖面デバイスに対峙するとシステムが開始。崖面のベルトコンベヤーが高速に回転を始める。ナイフの刃が柄の内部に沈むまでベルトコンベヤーに押し当てると回転速度が遅くなる、と同時に、HMDに表示される映像内の崖の移動速度も遅くなり、視触覚で落下速度が遅くなったことを錯覚させる。
さらにナイフを強く押し込むと、閾値を超えたところでベルトコンベヤーが停止し、映像上もナイフを持つ身体感覚上も停止を体感させて終了する。
出典および画像クレジット:常川広貴,松浦昭洋.滑落中の崖面にナイフを刺して停止するマンガ物理学的MRシステム.エンタテインメントコンピューティングシンポジウム論文集.2021-08-23 vol.2021,p.45-46
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