皿から10億件の情報収集 スシローが「データ活用すし屋」になっていた(2/2 ページ)
回転すしチェーン「スシロー」が、すしの皿から年間約10億件もの情報を集める「データ活用すし屋」になっている。店舗でのデータ取集の方法や、集めた情報の使い道とは。
データ活用でフードロス削減、利益率の改善も
皿やPOSレジなどから大量のデータを集めるスシロー。運営元のあきんどスシローやFOOD & LIFE COMPANIESは、フードロス削減やネタの鮮度管理などにこれらのデータを活用している。
例えばフードロスを抑える目的では、皿から集めたすしネタごとの人気度や、注文用端末の操作ログといった情報を活用。これらを参考に発注する材料の数を調整することで、食品の廃棄量を減らしているという。
フードロス削減は利益率の向上にもつながる。すしはネタの材料によっては原価率が高いものもある。スシローの各店舗では、集めたデータを基にフードロスになりやすい材料の発注数を調整し、利益率を改善しているという。
ネタの鮮度管理では、皿のICチップから取得した、すしがどれだけの時間レーンを流れたかの情報を活用。ICリーダーが読み取った回数を基にネタの鮮度を確認し、握ってから時間がたったと判断したものはFOOD & LIFE COMPANIESが独自開発した器具を使ってレーンから取り除いている。
例えばレーンにICリーダーを4つ設置している店舗の場合、全部のリーダーがICチップを読み取った皿を、鮮度が落ちたすしと判断。レーンから取り除き、すしの鮮度を一定に保っているという。
データの増加で分析基盤の課題も浮き彫りに
収集した大量のデータを事業に役立てるスシロー。実は皿にICチップを取り付ける試み自体は02年から行っていたが、当初は一部店舗でのみ導入しており、現在のような量のデータは集められていなかった。
その後、実施店舗を拡大したり、12年にデータ分析基盤のクラウド化を進めたりしてデータ活用の体制を整えた結果、18年ごろから継続的に10億件規模のデータを集められるように。フードロスの削減などに活用できるようになった。
一方、集まる情報が増えるにつれて浮き彫りになった課題もある。坂口さんによれば、収集できるデータが増えた結果、分析用データの保存システムとして使っているデータウェアハウスへの負荷も増え、情報の取り込みに時間がかかるようになっているという。
「店舗は年々増えており、まだまだこれからも増やしていく。これまで進出していなかった国への出店も考えているが、これに伴いデータ量もどんどん増えていくとみられる」
こういった課題を踏まえ、FOOD & LIFE COMPANIESは現在、自前で構築した従来のデータウェアハウスを、米Snowflakeが提供するSaaS型のデータウェアハウスに切り替えるプロジェクトを進めている。
「SaaSを活用することで、データ容量を気にせず店舗の増加に対応できるようにする」と坂口さん。すでに皿から集めた情報など、一部のデータは移行済み。データの取り込みにかかる時間も改善したことから、22年をめどに残りのデータも移行する方針だ。
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