iPhoneに新設された「故人アカウント管理機能」は何をもたらすのか(3/3 ページ)
Apple IDを持つ利用者が、自分の死後に特定の相手にiCloud上のデータを託すために使う機能について解説する。
遠足は家に帰るまで、デジタルの管理は死後まで
機能が追加された背景には、故人が残したデジタルデータの重要度の高まりがあるだろう。
亡くなった人の資産の情報や支払い契約が続いているサブスクリプションの情報、進行中の仕事のデータややりとり、訃報を伝えるべき相手のヒント、遺影に使いたい写真などなど……。その全てがデジタルで残されるというケースは年々確実に増えている。
そうした「デジタル遺品」の存在に気づいたとき、遺族や縁者の目は故人のスマートフォンに向かうことが多い。スマートフォンのセキュリティは非常に堅く、パスワード(パスコード)を突き止めないと開くことは相当難しい。仮に開けたとしても、持ち主以外が残した端末から有用な情報をノーヒントで探しきるのはやはり簡単なことではない。
故人アカウント管理連絡先の設定機能は、そうした苦労を回避するのに役立てられるはずだ。
そして、このApple公式の機能には、死後のデジタル資産の管理もユーザーに任せる側面があるように思う。「自分で備えるツールを用意したから、後は自分で何とかしようね」、と。
前例として、Googleは2013年から、アカウントが休眠化したときの処理方法を自ら決められる「Googleアカウント無効化管理ツール」を提供している。家族からの相談を受け付ける窓口も用意しているが、基本的なアカウントの処理方法はこのツールを使ってユーザー自身が決めるというスタンスが通底している。
Apple IDにひも付くデジタル資産の管理責任期間が死後まで延びるとしたら、気にしておきたいのはiCloudを使う必要がある点だ。クラウド上に重要データを残す習慣がない人は、引き続きローカル側での管理を「死後まで含めて」続けるか、iCloudを活用する方向に転換するか。その選択を迫られているのかもしれない。
いずれにしろ、「デジタル遺品はそっとしておいて」で済む牧歌的な時代は終わっている。デジタルの各種サービスも、死後のことまできちんと考えたうえで利用する態度が求められつつある。
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