4万円の自作キーボード1000台が1分で即完売 世界的に注目浴びる日本の開発者:ハロー、自作キーボードワールド 第11回(5/5 ページ)
日本発のキーボード設計者であり、今やキーボードの予約ページを立ち上げるたびに世界中から数千台の予約が殺到する、売れっ子デザイナーai03さん。作り出した背景やこだわり、今後のトレンドを聞く。
── そうすると入門というか、手の届きやすい価格帯の自作キーボード、カスタムキーボードが増えそうでいい時代ですね。大手カスタムキーボードストア米NovelKeysが販売するプラスチック製キーボードの「NK65」なんかも十分安くて、幸い生産も継続するって言ってくれていて。
ai03 その一方で自作キーボード、カスタムキーボードという分野の中でも分裂というか住み分けが出てきてますよね。「簡単に手に入る安いキーボード」とか、そこからワンステップ上がった「ちょっと高級路線になったキーボード」、そして「完全にコレクター向けで人のつながりがないと手に入らないキーボード」とか、段階的に分裂してきているのはありますよね。
── たしかに分断とも言えそうだし、成熟してきたともいえるかもしれないですね。
ai03 そういう一つ一つのグループに特化したキーボードを出しやすくなったというか、完全に高級路線以外を切ってしまうというような選択肢が出てきましたからね。結局それぞれのクラスの製品を求める人数が少なすぎたらそれは成り立たないわけですから、それぐらい全体としてのボリュームが出てきたという話でもありますね。
日本の開発者は世界でもっと活躍できる
ai03 そういえば「次に来そうなこと」ということで、もうそろそろ世界で活躍し始める日本人設計者が増えてくるのではないかと思うのですが……。
日本のコミュニティーにはすごい有能な人がものすごい数いるわけじゃないですか。もうみんな恐ろしいようなQMK(キーボードのファームウェア)の改造をしたりとか、ものすごい精度が必要なエルゴノミック系キーボードをサクサク創り出したりとかすごいなと思うんですけど、その割になんというか……いい意味での“欲”みたいなのをあんまり感じないなという(笑)
── 多分キーボードに限らず日本人がずっと言われてるやつですよね(笑)
ai03 欲がなさすぎても物事が動かないじゃないですか。もうちょっと踏み出せばいいのにって思うところがいつもあって。
例えば海外のキーボード設計者の友人だと、キーボードが欲しいから設計する、よし設計したから他の人にも使ってもらうために販売すると言って、それで大量に製造して好評を博して成功を納めている人がいる。
それぐらい本気でリスクを背負って、有名になりたいとか、このキーボードを有名にしたいとか、人に使ってもらいたいとか、現金な話ですけれどお金が欲しいとか、そんな欲でもいいからそういうものを持って世界に殴り込んでいってほしいですよね。これは自分勝手な願いですが。
── どっちも分かるんですよね。リスクテイクしないでこぢんまりとやりたい気持ちも分かるし、一方で「これは欲しい人いっぱいいるでしょ」ともったいなく感じるものもありますね。
ai03 個人的には、もちろんリスクはわざわざ冒したくないですけど、一切リスクを冒さなかったらつまらないじゃないですか(笑)
ちょっとリスクを背負って本気を出してみるのって楽しいですよ。そういうのをもうちょっと皆にやってほしいなっていうのはいつも思っていることですね。
特に今は世界的にキーボードの需要が増えていますから、設計者にとっては歴史に名を刻むチャンスみたいなところはありますし、逆にこれほど豊富な種類のキーボードから選べる時代を逃すわけにいきませんよ、という意味ではキーボードを使いたい側の方にもぜひチャレンジして飛び込んでみてほしいですね。
── そうですね。最近はキースイッチやキーキャップなどのパーツも含めて既存の枠にとらわれない製品がたくさん出ていて、ユーザー側としても幅広くいろいろなものが楽しめますし、作る側にとっても自分の作りたいものとユーザー側のニーズを合わせやすいかもしれない。そういう点でいいタイミングかもしれないですね。
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