キャッシュレスとスマートフォンの時代に向けた革小物 rethink「ニッチシリーズ」:分かりにくいけれど面白いモノたち(2/5 ページ)
iPodの実用的なケースを作り出したデザイナーが、コインとクレジットカードを収納できてなおかつ薄く小さい財布を開発した。
時代の2周くらい先を行く製品
同時期に、名刺入れとメモ帳とカードケースを一体化してペンまで内蔵できる、ICカード時代のカードケースまで作っていたのだから、先見の明どころか、2周くらい先を行っている。そのrethinkがキャッシュレスとスマホの時代に向けて製作したのが、ニッチシリーズ。これ以上ないというくらいミニマムに作られた財布とキーケースとカードケースの3種類が、それぞれに補完しあうという、革小物の新しい使い方の提案だ。
「『Lim Wallet』を作ったときには、かなり小さな財布を作ったと思っていたのですが、最近は、カードも3、4枚しか入れていないし、今となってはずいぶん大きく感じたんです」と守川氏。小さな財布を作りたいと思ったときに、頭にあったのは、エムピウの名作「ストラッチョ」だったそうだ。3つ折りの財布として、あれ以上の構造は考えられないと思ったと守川氏は言う。
それは私も同感だった。「ストラッチョ」は、その構造があまりにも画期的な上に、ものすごくシンプルで簡単に作れるため、今や革だけでなくさまざまな素材で作られたパクリ製品が出ているが、あのパターンの最初は、エムピウの村上氏が考案したものだということは、ここで強く、言っておきたい。「Clipon Coin Holder」がrethinkのものだということも繰り返しておく。また、アブラサスの「小さい財布」も3つ折りのコンパクトな財布としてよくできている。
「でも、自分が欲しいのはそういうものではないと思ったんです。やはり厚くなるのは避けたいので、2つ折りにしたい。ではどうするか、といろいろ考えました」と守川氏。
実際、アブラサスも「薄い財布」は2つ折り、「小さい財布」は3つ折りで、中に入れるものが決まっている財布の場合、小さいと薄いを両立するのは難しい。
守川氏が考えたのは、厚くなるのはコインのせいだということ。しかし、キャッシュレスとはいえ、まだまだコインは必要で、カードケースだけで生活するのは難しいと思ったからこそ、もう一度財布を作ろうと考えた訳で、コイン収納部を無くすことは考えられない。そこで、コインケースを2つに分けるというアイデアを思い付いて、実際に試作してみた。
「これは、かなり薄くできたし、うまくいったと思ったのですが、使っていると、スマホでの支払いに対応していない時など、カード入れは必要でした」と考えた守川氏はカード入れを付けたが、それだけでは済まさなかった。
最初はカードケース部分に被せを付けていたのを外し、さらに、名刺は入れずカードだけ入れば良いということにして、全体を名刺より小さなサイズにした。このあたりの妥協の無さが、守川氏の真骨頂だろう。
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