「YouTubeは偽情報対策を強化すべき」と国際ファクトチェック団体がCEOに公開書簡
YouTubeは偽情報対策を十分に行っておらず、対策を強化すべき──。世界の80以上のファクトチェック団体がYouTubeのCEOにこのような共同公開書簡を送った。特に非英語圏での対策が不十分だとしている。
世界中の80以上のファクトチェック団体のグループ「International Fact-Checking Network」は1月12日、米Google傘下のYouTubeのスーザン・ウォジスキCEO宛の共同書簡を公開した。「YouTubeは、悪意ある攻撃者が他者を操作して悪用したり、組織的に資金を調達したりするためにYouTubeを武器にすることを放置している」と批判している。
書簡では、YouTubeが「世界中のオンライン偽情報や誤報の主な経路の1つ」だと指摘し、ワクチンや選挙に関する偽情報に対して現在より確実な対策をとることを要求している。
この団体には、米Washington Postのファクトチェックチームやアフリカ、欧州、アジアなどのグループが参加している(日本からの参加はない)。
書簡では、ワクチン接種のボイコットや新型コロナの誤った治療法など、実際にYouTube上で削除されずに視聴されている動画の例を複数紹介し、「例が多すぎて数え切れないが、こうした動画やチャンネルの多くは現在もオンラインのままであり、特に非英語圏では対策が不十分だ」と指摘する。
その上で、以下のような対策を要求した。
- プラットフォーム上の偽情報に関する有意義な透明性への取り組み
- 動画を削除するたけでなく、コンテキストの追加やデバンク(投稿者の正体を暴露すること)
- 常習犯への対策
- 非英語圏での対策の強化
また、YouTubeの推奨アルゴリズムがユーザーに偽情報を積極的に推奨したり信頼性の低いチャンネルからのコンテンツを推奨したりしないようアルゴリズムを修正する必要があるとも主張した。
YouTubeは英Guardianなどに対し、同社は長年にわたって違反動画を削除するなどの対策に多額の投資を行ってきたという声明文を送った。「境界線上の誤った情報(ポリシー違反ではないが、誤った情報のこと)の消費を全視聴回数の1%未満に抑えるという進歩が見られた。(中略)われわれは常に改善するための有意義な方法を模索しており、ファクトチェックコミュニティとの協力を強化し続ける」としている。
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