Tポイント危機説は本当か? ヤフーなど大手企業の「Tポイント離れ」が与える影響と課題(2/2 ページ)
「Tポイント経済圏」が大きく揺らいでいるという話題が最近よく聞かれるようになった。ヤフーなど大手企業が「Tポイント離れ」を起こし始めているためだ。その理由をひもとく。
なぜ「Tポイント離れ」が起きるのか
離脱に至る理由はシンプルで、「加入のメリットが薄い」ことにある。加盟店がTポイントを利用したりTカードを発行するにあたり、システム利用料や「ポイント原資」の拠出を求められる。本来であれば、これらの支出によって利用者のポイントが付与され、再来店に結び付く経済循環が生まれ、さらにポイントカードを利用する際に発生する行動データを入手することで以後のマーケティング活動への活用が可能になる。
だが出資に対する実入りが少ないのであれば、Tポイントを利用するメリットは少ない。加えて、データマーケティングに必要な行動データや分析ツールの利用には「追加料金が必要」というメニュー構成になっており、懐事情を圧迫する。結果として「負担が大きい割にメリットが感じられない」と感じる加盟店が増え、独自のポイントプログラムやハウスマネーを導入する動機へと結びついているという流れだ。
実はこの影響は大手ほど大きい。利用金額や回数の多い店舗ほど持ち出す金額が大きく、反面その実入りは少ないという状況が生まれる。さらに悪いことに、共通ポイントであるがゆえにキャンペーンのために自らが拠出した原資がそのまま還元される保証がない。
特に最大のポイント供出源であったソフトバンク(Zホールディングス)が離脱して独自のPayPay経済圏へと移行することで、残った加盟各社に還元される資金や流入はより減少が見込まれる。先ほど関係者が「CCCは非常に苦しい状況にある」と証言していたのはこの部分で、残った加盟店の負担が厳しくなることで悪循環に陥る可能性があるという見方だ。
別のある関係者は「Tポイントが始まった当時、このような共通ポイントを使ったデータマーケティングという仕組みは目新しく、多くの企業が飛びつく形となった。だが実際に加盟にあたってその効果測定やデータの利活用についてきちんと把握できていた会社はそれほど多くなく、それが10年の期間を経てようやくその実態について理解されつつある」と指摘する。
つまり共通ポイントのメリットとデメリットが最近になり、より正確に理解されはじめ、デメリットがメリットを上回ったと感じた企業から離脱や他の方法を模索する動きが起きつつあるというのがここ数年のトレンドというわけだ。
Tポイントは加盟店のニーズとのミスマッチを解消できるか
Tポイントの仕組みにおける問題は、「(加盟店の資金)流入を上回る流出」「共通ポイントゆえの融通の利かなさ」という部分にあり、ポイント循環のエコシステムが鈍化する前に適正な形に修正する必要があることに帰結する。
近年であればこの手のポイントプログラムやハウスマネーを安価に導入するソリューションも多数登場し、事例も増えたことで導入のハードルはそれほど高くない。共通ポイントという部分にこだわらない限り、大手であればより導入のハードルは低くなり、それが結果として離脱を生み出す。CCCとしては、会員規模だけではない、Tポイントならではのメリットを打ち出す必要がある。
また単純な離脱ではなくマルチ方式に移行するケースも考える必要がある。Tポイントを維持、あるいは独自のハウスマネーに移行しつつ、さらにdポイントや楽天ポイントに加入するケースだ。これはdポイントや楽天ポイントといった外部の経済圏を新たに取り込み、リーチできる層を拡大することが狙いにある。つまり、Tポイントを維持している限りはこれ以上の横の広がりは望めず、頭打ちというわけだ。
これが意味するのは、日本の人口の6割弱をカバーする規模感がゆえに、すでに新たな顧客開拓が難しいということだ。スタートから18年以上が経過したTポイントプログラムだが、仕組みを含め、いろいろな意味での岐路に立ちつつあるということだろう。
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