最高裁判所は1月20日、仮想通貨のマイニングツール「Coinhive」を閲覧者に無断で自身のWebサイトに設置したとして、Webデザイナーの男性が不正指令電磁的記録保管罪に問われた「Coinhive事件」について、二審の有罪判決を破棄して無罪と判断した。
サイト内に設置したプログラムコードが、刑法168条の2第1項のいう「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録(不正指令電磁的記録)」に当たるのかが争点となっていた。
一審の横浜地裁は「プログラムコードは、反意図性が認められるが、不正性は認められないから、不正指令電磁的記録に当たらない」として、無罪を言い渡した。これに対し、二審東京高裁は「プログラムコードは、反意図性及び不正性が認められ、不正指令電磁的記録に当たる」として一審判決を破棄し、罰金10万円の有罪としていた。
追記:午後4時45分 「反意図性は認められるが不正性は認められない」
弁護士ドットコムの報道によると、マイニングがPCの機能や情報処理に与える影響について最高裁判所は「サイト閲覧中に閲覧者のCPUの中央処理装置を一定程度使用するに止まり、その仕様の程度も、閲覧者がその変化に気付くほどのものではなかった」と指摘。
続けて、サイト運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは「Webサイトによる情報の流通にとって重要」であり、「広告表示と比較しても影響に有意な差異は認められず、社会的に許容し得る範囲内」とした上で「プログラムコードの反意図性は認められるが不正性は認められないため、不正指令電磁的記録とは認められない」と結論付けたとしている。
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