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「サンプラーの元祖」メロトロンの構造がアナログの極みすぎる そして複雑な楽器の著作権問題について:古代サンプラーがアプリになるまで(3/7 ページ)
メロトロンの著作権については2つの派閥がある。
なぜテープをループしないのか?
次の写真は、鍵盤ユニットを外した状態の再生ヘッド周辺を写したものだ。爪型のガイドの中をテープが走行する。テープのヘッド位置にダーマトグラフ(通称:デルマ)で印が付けられているのが見える。デルマは、アナログテープに印を付ける際の必需品だ。右に見える黒いローラー群は、テープリターンローラーといい、スプリングの張力を受け止めながらテープをスムーズに走行させる役割を担っている。
テープ走行のイメージ図。Fred the Oysteri, The source code of this SVG is valid. This vector image was created with Adobe Illustrator., CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
このテープ走行の仕組みを図で見ると比較的単純なように感じるが、実機を子細に見ていくとテープトラブルを回避するための工夫が随所に散りばめられている。
さて、ここで1つ疑問がわく。テープをループさせてエンドレスにすることでもっと単純な構造にできるのではないか。また、ループしていれば、メロトロンの欠点である、7〜8秒で音が途切れることもない。
テープを巻き戻し型にしたのは、音源にその理由がある。メロトロンの音源のなかには、ボサノヴァなどのリズムパターンをフレーズ単位で収録したものがある。今でいうフレーズサンプリングだ。このような音源は、鍵盤を押したら常にフレーズの先頭から再生されなければ具合が悪い。
またギターやビブラフォンのような、波形が立ち上がったら次第に減衰する音源も同様だ。鍵盤を押したら常に波形の先頭から再生されなければならない。Mellotronの原型ともいうべきChamberlin(チェンバリン)が登場したのが1950年代だけに、当時の技術では、ループ式にしたら常に波形の先頭から再生させる仕組みを実現できなかったのかもしれない。
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