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ホールでの録音をデジタルツインによる空間オーディオでシミュレートしてみた(作例付き)(5/6 ページ)

Logic Proの空間オーディオ機能を活用し、モデリング音源と仮想マイクでホール収録を再現する試み。

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悲報! Apple Musicでは設定が反映されない

 ヘッドフォンでの聴取(Binaural)を前提としたDolby Atmosミックスを実施して感じたのは、ゲームや映像系の音源のような、エキサイティングで感動的なユーザー体験は得られないということだ。特に今回のようなホールでピアノを収録したコンテンツだと、オブジェクトトラックの定位をグリグリと縦横無尽に動かすわけにもいかず、どうしても地味な結果になる。

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ホールでのピアノソロ収録をDolby Atmosで再現するものの、どうしても地味な効果しか得られないのはしかたないのか……

 だが、Dolby Atmosミックスでは、通常のステレオミックスとは異なるリスニング体験を得られることは確かで、演奏中のピアニストの背後で聴いているような音像をイメージできると思う。一方のステレオミックスでは、両耳を結んで引いた線上に左右に振り分けた音が鳴っている印象は拭えない。

 ただ、Binaural設定の場合、空間オーディオの醍醐味である高さを表現することが難しかった。いろいろと試行錯誤してみたが、音の遠近が変わるだけで頭上を満たす残響音に包まれた感覚は得られなかった。やはり、高さを表現するのは、スピーカー環境でのリスニングでないと難しいのかもしれない。

 実は、Binaural設定について悲報をお伝えしなければならない。Dolby Laboratories 謹製のレンダリングツール「Dolby Atmos Renderer」で書き出したADM BWFファイルだと、Apple Musicで配信された際、Binaural設定が反映されないのだ。Apple Musicは、Dolby Atmos規格とは異なる独自のBinauralレンダリングを行っていることが原因だ。ちなみに、Amazon Music UnlimitedとTidalは、Dolby Atmos RendererのBinaural設定に対応している。

 そうなると、Dolby Atmos Rendererではなく、Apple製のDAWであるLogic Proで書き出したADM BWFファイルだと反映されるのかという疑問が持ち上がる。それについては現在、Appleに確認中なので、その回答を待ち、AirPods Pro、AirPods Maxなどハードウェアとの関係も含めて周辺情報を整理した上で別の機会に記事としてまとめたい。

 ちなみに、文末で提供しているサンプル音源は、Logic ProでADM BWFとして書き出したファイルをDolby Atmos Rendererを利用してMP4ファイル(Dolby Atmosのメタデータを含んだ圧縮形式)に書き出した。

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