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Adobeが考える「メタバース・レディな世界」の可能性 AR室長にインタビュー(2/3 ページ)

あちらこちらで聞こえてくる「メタバース」だが、クリエイティブツールの最大手である米Adobeも注視する領域だ。実際にどのような取り組みを進めているのか、米Adobeのステファノ・コラッツァ氏に聞いた。

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広く支持される「blender」とも手を組む

――Adobeは今回「Metaverse Ready」を打ち出します。これらの世界の中では、どのような要素を示していて、どのようなツールを使うことになるのでしょうか?

コラッツァ 前出の4つ例は、すべて「3Dコンテンツ」を必要とします。一般的なコンテンツ制作にはPhotoshopやIllustratorが広く使われていますが、3Dコンテンツには、テクスチャリングの主要ツールである「Substance 3D Painter」があります。


「Substance 3D Painter」はSubstance 3Dシリーズの中核であり、利用している企業やクリエイターも多い。

 また今回、デスクトップとVR向けの3Dモデリングツール「Substance 3D Modeler」について、ARショッピングに関連するツールをプレビュー公開しています。これによって、企業が物理的な空間にあるものを「デジタルツイン」として作成できます。現在のEコマースや、将来のメタバースに利用するコンテンツを作成する3Dツール一式を揃えています。

――まさに、メタバースにおけるPhotoshopやIllustratorのような存在を作れるかどうかが、Adobeにとっては重要な点かと思います。そのためにはどのようなアプローチが必要だと考えていますか?

コラッツァ Substance 3D Painterはその分野のリーダー的存在です。「Roblox」や「Halo」のようなゲーム、「マンダロリアン」や「ブレードランナー 2049」などの映像作品でも使われています。ですからすでに、Photoshopのような地位を獲得していると言えるでしょう。

 今私たちが取り組んでいる分野は、3Dモデリングです。Substance 3D Modelerはアーティストのワークフローを重視したツールで、非常に魅力的です。


モデリングツールである「Substance 3D Modeler」は、現在プレビュー版を公開中。Adobe Summitでは、ARショッピングを支援する機能が公開される。

 しかし「Blender」のような超人気ツールがあることも理解しています。

 実は彼らと提携しています。昨年、Blender向けにSubstanceのプラグインとMixamo(Adobeが提供する3Dキャラクターのアニメーション作成ツール)のプラグインをリリースし、大成功を収めました。

 私たちは、より多くの人に使ってもらいたいと思っています。彼らは最高品質を求めますが、私たちは間違いなくアーティストにとって最高のツールだと確信しています。

 特に現在は、機械学習を使ったアプローチを活用しています。

 Photoshopでも、より多くの人に便利さを届けるために機械学習を使ったツールが提供されていますが、3Dデータ製作でも同じように、ユーザーの作業を簡素化できると考えています。

――3Dへの機械学習の活用について、もう少し教えてください。具体的にはどのようなことに使うのでしょうか?

コラッツァ 一例を挙げましょう。

 1枚、素材の写真を撮ったとします。そこから、機械学習を使って実際の完全な素材を、適切なシェーディングと物理ベースのレンダリングを使って再構築することができます。

――写真の素材から、正しいテクスチャやアトリビュートを決定できるということですね?

コラッツァ はい。写真を撮ったら、カラーラフネス・メタルネス・ノーマルマップなど、すべてのマップを抽出し、メタバースの仮想世界で忠実にレンダリングすることができます。これには、多くの機械学習が使われています。

 また「Substance 3D Stager」では、1枚の写真から環境光を計算するために、機械学習を使っています。そうすることで、実際に適切な光を当てて、リアルに見えるようにすることができるのです。1枚の画像から複雑な材料特性や照明を推定・計算するために、多くの機械学習が行われています。

 また、レイトレーシングやレンダリングのノイズ除去にも機械学習を使っています。基本的に、私たちのツールのあらゆるところに導入されています。

――モデリングについていかがですか?

コラッツァ これは、「Substance 3D Designer」にある「Substance Structure」と呼ばれる機能です。テクスチャだけでなく、モデリングを管理するために、より複雑な演算を活用する方法なんです。例えば、葉の茂みの配置を変更することができます。


モデリングにおける計算生成的(プロシージャル)アプローチを使い、手間を軽減している

 私たちは何年も前から、この方法でテクスチャを作成してきました。今は、モデリングにも使っています。

――フォトグラメトリーへの取り組みは進んでいるのでしょうか。デジタル・ツインの構築にはとても有用な技術だと思いますが。

コラッツァ もちろん取り組んでいますよ。「Substance 3D Sampler」の中で取り組んでいます。ただ、まだリリースはされていないはずです。チームがなんらかのソリューションに取り組んでいるはずですが、リリース時期は私の方では把握していません。

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