スーパーの「パック肉」が自分好みか、AIが判定 カメラで撮影し、色味や脂身量を解析:Innovative Tech
明星大学情報学部丸山研究室の研究チームは、スーパーマーケットなどに陳列するパックに入った精肉が自分の好みかどうかの選定を支援する手法を開発した。色味や脂身量、脂身の入り方の3種類を指標に、自分好みを数値化し、判定する。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
明星大学情報学部丸山研究室の研究チームが開発した「精肉商品の好みを定量化する手法の提案」は、スーパーマーケットなどに陳列するパックに入った精肉が自分の好みかどうかの選定を支援する手法だ。色味や脂身量、脂身の入り方の3種類を指標に、自分好みを数値化し、カメラで撮影した肉が自分好みと類似しているかを判定する。
スーパーなどが販売するパックに入った精肉は、商品ラベルは同じであっても、色味や脂身の割合など、個体差が多く存在する。そのため消費者は、自身の好みと照らし合わせながら陳列棚の前で精肉を見比べ、どれが良いかを目視で判断する。なかなか決められない場合も多いだろう。
そこで研究では、精肉商品を撮影し指標となる特徴を取得することで、消費者の好みを定量化する手法を提案する。定量化したデータを基に、新たに撮影した精肉が自分好みに類似しているかを選定してもらう使い方ができる。
今回は個体差の多いアメリカン・ビーフの肩ロースステーキ肉を対象とし、パックに入った状態の精肉をスマートフォンのカメラで撮影した画像を入力に使用する。肉の指標は、色味(良いか悪いか)と脂身の量、脂身の入り方(塊、筋、サシ)の3種類とする。
色味の分類は、色特徴(HSV)に基づいてSVM(サポートベクターマシン)で検証する。脂身量は、前処理として背景や商品ラベル、照明の映り込み箇所を手動で除去し、画像を2値化することで脂身部分のピクセル数を取得する。脂身の入り方は、塊を一定値以上の大きな面積領域とし、筋とサシは外接長方形のアスペクト比と面積を組み合わせて識別する。
実験結果は以下のようになった。色味の分類は、平均50%以上と分類精度の向上が必要な結果となった。脂身量は、脂身の輪郭を抽出し脂身部分のピクセル数を取得することで算出することに成功した。脂身の入り方の識別は、各脂身種類に個体差があるため各脂身種類の形状取得の手法は検討が必要な結果となった。
今後は、色味分類の特徴量の見直し、CNNなどの別の分類器の検討、脂身種類識別のための形状取得手法の検討、各脂身領域の分布や面積の合計を使った各脂身種類の割合算出の検討を行いたいとしている。
解説動画はこちら
出典および画像クレジット: 相山 未来,丸山 一貴. “精肉商品の好みを定量化する手法の提案” 情報処理学会 インタラクション2022.
動画クレジット:視覚障がい者に向けた精肉商品の選定支援 http://www.is.meisei-u.ac.jp/thesis/project/557
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