もうPCIでは遅すぎる さらなる高速化目指すPCはPCI Expressへ:“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(4/4 ページ)
ISAからPCIに移行したPCだが、その後はどうなったかという話。
高速化を牽引したのはグラフィックスではない
ただ面白いのは、これまでPCI→AGP→PCI Expressという変遷の牽引役だったグラフィックスカードは、PCI Express 3.0辺りでほぼその役割を終えている。理由は簡単で、AGPの効果がなかったのと同じく、外部バスをいくら高速にしても性能にほとんど差がないためである。
実際、例えばPCI Express 3.0 x16対応のビデオカードをPCI Express 2.0 x16で使ったり、あるいはPCI Express 3.0 x8相当で使ったりしても、性能は数%変わるかどうかという程度でしかない。正直に言えばこれはAGPの時代から全く変わっていないのだが、マーケティング的な理由でこれをはっきり言えなかった、というのが正確なところか。
そのグラフィックスカードに代わって、新たなPCI Expressの牽引役になったのはストレージとネットワーク、アクセラレータである。特にストレージは、2009年にSATAやSASといったストレージのプロトコルをPCI Express上に通すNVMe(Non Volatile Memory Express)という規格が決まり、当初はサーバ向けがメインだったはずなのが、コンシューマー向けにもNVMe M.2 SSDというPCI Express x4レーン向けの規格が普及し始めたことで爆発的にそのニーズが増えた(この辺の話はまたいずれ)。
同様にネットワークやアクセラレータなどは、グラフィックスよりももっと切実に「より広い帯域」を必要としており、こうしたものがPCI Express 4.0以降は明確な牽引役の主役に躍り出た感じだ。
既にPCI Expressは単にPCだけでなく、サーバや産業機器、小さな組み込み機器でも使われるようになっており、USBと並んで広く使われる規格になっており、さらにさまざまな規格がPCI Expressを利用して構築されるようになっている。もう昨今では組み込み機器でもPCIを使うケースはほぼレアになっており、USBかPCI Expressかといった感じになっている。
Intelは2010年に投入したIntel 5シリーズチップセットまではPCIのサポートを継続していたが、次のIntel 6シリーズではサポートを打ち切っている。ただISAのときと同じく、しばらくはPCI Express/PCI Bridgeを介する格好でPCIスロットがマザーボードに残り続けた。
これもなくなり始めたのは、2013年のHaswell世代(Intel 8シリーズチップセット)が市場に登場した辺りだろうか? PCI Expressが登場してからも10年近く、PCIはPCの主要な拡張バスであり続け、その後でようやくPCI Expressにその座を譲った格好だ。
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