「働き方」はテレワークで変えられるのか 「完全リモートでも東京で暮らしたい」から考えた:小寺信良のIT大作戦(2/2 ページ)
「これからの働き方を考える」調査レポートの結果を、小寺信良さんが読み解く。
完全テレワークでも東京を離れない?
「今後出社がなく全てテレワークで働くことになり、住むところを自由に選べるとしたら、どこで暮らしたいか」という設問に対する答えは興味深い。最多は東京都の27.3%である。
北海道、沖縄は別として、15位の広島県ぐらいまでは現在の居住地もしくは会社近郊ではないかという気がする。大都市を抱える、もしくは大都市圏である場所と考えると合点がいく。会社によっては、通勤圏に住むことを指示されているところもあるだろう。
東京、神奈川を選ぶ理由としては、「交通の便が良いから」「買い物やショッピングに困らない」「いざとなったら職場に通える距離」といった利便性を重視していることが分かる。筆者も東京近郊に37年住み続けたので、都会なら何でも手に入る、どこにでも行けるという万能感は理解できる。
一方北海道・沖縄を選んだ人は、「自然の近くで働けそう」「静かな環境で仕事できそう」と、環境面を重視していることが分かる。ただ独身者ならいいが、家族も連れて移住するとなると、配偶者の仕事は大丈夫か、子供の教育は十分かといったことも考えなければならず、土地勘もなければ縁もゆかりもないという場所へ越すというのは、非現実的だろう。
一時的な移動であるワーケーションでも、北海道と沖縄の人気は揺らがない。逆に東京へは、被東京在住者が行ってみたい場所として上げているものと思われる。
その半面、日本随一の光ファイバー網を誇り、ほとんどのエリアで高速Wi-Fiが無料で使い放題、なおかつ人口が少ないのでネットが空いてる徳島県が最下位というのは、まだまだワーケーション先を生産性より雰囲気で選んでいるという気がする。逆にワーケーションに対する条件や環境の広報宣伝は、まだ全然足りていないということでもあるだろう。
テレワークは、場所と時間が自由になるというイメージがあるが、実際には業務時間や、いざとなったら出社できる範囲といったルールに縛られており、それだったらこれまで通り出社したほうがまし、といった考え方に陥りがちである。
上記のグラフでも示されているように、ウイルス感染リスクが少ないことがあまり重視されなくなっているということもまた、「これまで通りでいいじゃない」に戻ってしまう要素をはらんでいる。労働者がテレワークがいいと思っていても、経営者や管理職がそう思っていなければ、テレワークできるのにやらない、ということになる。
働き方改革は、テレワークをやることが全てではない。人それぞれ多様な事情を抱えているのにも関わらず、仕事は多様な働き方を認めていないところにひずみがあるのは確かだ。たとえ出社が前提であっても、いつでもテレワークが可能なレベルの労働環境へシフトすれば、生産性は上がり、労働時間は短縮できるはずである。
出社する、しないにこだわらず、テレワーク可能化はそうしたひずみを解消する1つの投資であると考えてはどうだろうか。
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