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YouTubeの“おすすめ動画”を他人と交換できるプラグイン 見知らぬ誰かのレコメンド動画を視聴可能にInnovative Tech

米Virginia Techの研究チームは、YouTubeにおいて、他人にオススメ(レコメンド)される動画の一覧が表示されるプラグインの開発と、そのプラグインを使用した際のユーザーの評価を考察した論文を発表した。

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Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米Virginia Techの研究チームが発表した「OtherTube: Facilitating Content Discovery and Reflection by Exchanging YouTube Recommendations with Strangers」は、YouTubeにおいて、他人にオススメ(レコメンド)される動画の一覧が表示されるプラグインの開発と、そのプラグインを使用した際のユーザーの評価を考察した論文だ。

 自分にレコメンドされる動画一覧を誰かに提供する代わりに、見知らぬ人にレコメンドされる動画一覧がYouTubeトップページの一部に表示される。これによってユーザーにどのような変化が起きるかを分析した。


OtherTubeのユーザーインタフェース。(1)他人のレコメンド動画一覧の表示・非表示を切り替える、(2)現在の他人とは異なる他人への切り替え、または同じ他人内の異なるレコメンデーションセッションへの切り替え、現在の他人をピン留めする、(3)見知らぬ人の匿名プロフィール、(4)見知らぬ人から収集したレコメンド動画一覧、(5)日々の調査へのリンク、(6)ユーザー自身のレコメンド動画一覧

 ソーシャルメディアやコンテンツ共有のプラットフォームは、ユーザーのエンゲージメントを高めるために、アルゴリズムを使ってパーソナライズしたレコメンド機能を組み込んでいる。これらのアルゴリズムは、一般的に、ユーザーの過去のインタラクション履歴に基づいて、ユーザーが何に興味を持つかを予測することによって機能する。

 このメカニズムは、ユーザーが消費しそうなコンテンツを制限してしまい、ユーザーが楽しめたかもしれない利用可能なコンテンツの大部分をフィルタリングしてしまう。その結果、エンゲージメントを高めるかもしれないが、ユーザーは孤立に陥り、選択を制限される可能性がある。

 この課題に対し、研究ではYouTubeを対象に、他人に表示されるレコメンドを見れるようにするYouTube用ブラウザプラグイン「OtherTube」を提案する。OtherTubeは、全てのOSで利用可能なChromeの拡張機能であり、ユーザーはChromeブラウザだけでYouTubeを閲覧できる。

 このシステムは、ユーザーがYouTubeにアクセスするたびに、そのユーザーのレコメンド動画、特に上位2〜3列の動画を収集することで動作する。そして、そのおすすめ動画をデータベースに蓄積し、翌日以降に見知らぬ人と共有する。ユーザーは、自分のレコメンド動画を見知らぬ人に提供する代わりに、見知らぬ人のレコメンド動画にアクセスできるわけだ。


OtherTubeの仕組み。自分のレコメンド動画を翌日に他の人に共有する

 見知らぬ人のレコメンド動画一覧を自分のYouTubeページに表示するわけだが、その他人に関する追加情報を共有するために、OtherTubeでは各ユーザーに専用の匿名プロフィールの作成を推奨している。

 ユーザーは、共有される見知らぬ人を変更でき、また同じ見知らぬ人の中でも違うレコメンド動画に変更できる。気に入った見知らぬ人はピン留めできる。ピン留めすると、その人のお気に入りが時間と共にどう変わっていくかという変遷が確認できる。

 ユーザーが特定のレコメンド動画を見知らぬ人と共有したくない場合は、OtherTubeが収集するセットから個々の動画を削除することを選択できる。レコメンド動画一連はユーザーの視聴履歴に集まりではないため、気に入らないレコメンド動画があれば一覧から外せる。


他人と共有したくないレコメンド動画を削除できる

 参加者41人を対象に、OtherTubeを用いて10日間のユーザー調査を実施した。参加者には毎日OtherTubeの使用とインタラクション、アンケートの回答を行ってもらった。

 その間にOtherTube内で発生したインタラクションについて、動画のクリック数や異なるペルソナを見るためのクリック数などの情報をログに記録した。調査期間中の参加者の行動をより深く理解するため、11人の参加者にインタビューも行った。

 分析の結果、OtherTubeは、全員ではないが一部のユーザーにとって、見知らぬ人のパーソナライズされたレコメンドを見ることで、新しい興味の開拓や古い興味の再発見に役立つことが分かった。

 YouTubeで音楽を聴くユーザーは新しい音楽の発見に役立ったり、 知らない人のコンテンツを見て、新しい興味を持ったり、以前から持っていた興味を再発見したりと、有望な結果が得られた。

 また、同じような興味を持つ他のユーザーと出会うことで、帰属意識を持つことができることが分かった。機械的なランダムではなく、誰かという他人が向こう側にいるという設定が効果を高めているのかもしれない。

 一方で研究チームは、ユーザーが不快に感じるレコメンド動画が表示されないように、他人とのマッチングをアルゴリズムで設定する必要があるかもしれないと考えている。ただし、極端に類似したユーザー同士のペアリングは、新しいコンテンツの発見につながりにくくなるため避ける必要がある。

 将来的には、気になる(ピン留め)他人とコミュニケーションが取り合える機能も実験していきたいという。ユーザーが直接、他人に特定の動画をレコメンドすることや、メッセージによるやりとりなどが考えられるが、これら機能の実装には慎重にならなければならないだろう。

Source and Image Credits: Bhuiyan, Md Momen, et al. "OtherTube: Facilitating Content Discovery and Reflection by Exchanging YouTube Recommendations with Strangers." arXiv preprint arXiv:2201.11709 (2022).



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