「アバターの肖像権」はどうする? メタバースなどで整理すべき課題をまとめたガイドライン公開(3/3 ページ)
KDDIが代表幹事を務め、東急、みずほリサーチ&テクノロジーズ、渋谷未来デザインなどが参画するバーチャルシティコンソーシアムが、“都市連動型メタバース”における課題や論点をまとめた「バーチャルシティガイドライン ver.1」を公開した。
“真のメタバース”への課題提起
ガイドライン策定で中心的な役割を果たしたKDDIの中馬和彦氏(KDDI事業創造本部 副本部長)は現在の「バーチャル渋谷」が“プレメタバース”の段階にあると言及。その次のステップに相当する“真のメタバース”では、「リアルの町のように、何百人、何千人が同時に入り、長時間滞在できるものになる。他の仮想環境との行ったり来たりすることもでき、自律的な経済圏が生まれる」と定義づけた。
その上で、「今回のバーチャルシティ宣言は、提言ではなく“課題提起”だ」と説明。ガイドラインは、バーチャル渋谷を真の都市連動型メタバースに昇華させるために、課題や論点の明確化を行ったものとしている。
ガイドラインは、他の都市などへメタバースを提案する際の“たたき台”としての役割もある。中馬氏によると、バーチャル渋谷のサービス公開後、全国の自治体などから問い合わせが相次いでいるという。新たな都市で展開する際に、渋谷での実践例をまとめたガイドラインをモデルとして、議論を進めていく方針だ。
他の業界団体との連携について中馬氏は「メタバースに関する提言をいち早く公表した狙いとして、他の団体が引用したり、この点は方針が違うと指摘したりと、議論のきっかけとなるという目的もある。バーチャルシティコンソーシアムで経済産業省にご参加いただいているのも、民間での活動をつないでいただくためでもある」とした。
経済産業省の上田泰成氏は「都市連動型メタバースは政府が進めるデジタル田園都市構想に沿うもの」としつつ、「日本全体でメタバースを協調領域として捉えて、勝ち筋として進めていきたい」と政府として支援する姿勢を見せた。
コンソーシアムで法律監修を担当したSAKURA法律事務所の道下剣志郎弁護士は「世界中からメタバースに人が入ってきたときに、管轄国の法律を一概に適用するのは難しい。世界で連携してのルールメイキングが必要なのでないか」と指摘。メタバースを巡る国際的なルール形成への意欲を示した。
【修正履歴:2022年4月28日午前10時 インターネット上に都市の景観を再現する行為について、保護される建築物の表記を修正しました】
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