リコーとサイボウズが業務提携 「リコー版kintone」を巡る両社の思惑は?
リコーとサイボウズが業務提携を結ぶと発表した。ノーコード開発ツール「kintone」をベースに「リコーブランド版kintone」(仮称)を共同開発。10月に国内で提供を開始する。北米、欧州にも順次展開し、2026年3月までに100億円規模の売り上げを目指す。
リコーとサイボウズは4月27日、デジタルサービス事業で業務提携すると発表した。サイボウズのローコード・ノーコード開発ツール「kintone」をベースに「リコーブランド版kintone」(仮称)を共同開発。10月に国内で提供を開始する。北米、欧州にも順次展開し、2026年3月までに100億円規模の売り上げを目指す。
kintoneはプラグインによるノーコードでの機能拡充やプログラミングによるカスタマイズといった拡張性を特徴とするツール。4月27日時点で2万4000社が導入しており、非IT部門が導入を担う案件が9割を超えているという。
リコーブランド版kintoneでは、リコーの複合機や、同社がクラウドサービスとして提供するワークフローのデジタル化基盤「RICOH Smart Integration」(RSI)との連携を実現する。リコーの顧客からフィードバックされた課題を基に独自のプラグインも開発・実装する方針だ。
リコーは2021年にAIを活用したデータビジネスに参入するなど、ビジネスの軸足を複合機の生産などからデジタルサービスに移しており、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援に注力している。リコーの山下良則社長は今回の提携とリコーブランド版kintoneにより、デジタル技術の活用を前提としたワークフロー改善の提案力を大幅に強化できるとの見通しを示した。
「リコーはドキュメントを扱うソリューションについてはプロだと自負しているが、その先のプロセスにどのくらい手が届いているのかという課題があった。リコーブランド版kintoneはRSIを業務改革プラットフォームに進化させるために必要なパーツだった。業務の現場から主体的に業務改善に取り組む支援ができるツールであり、国内の認知度やシェアも抜群」(山下社長)
リコーブランド版kintoneを中心に、ワークフローのデジタル化関連事業全体で26年3月までに500億円規模のビジネスを新たに創出することを目標に掲げる。
一方、サイボウズはkintoneの販路拡大に期待を寄せる。リコーグループは国内販社であるリコー・ジャパンを中心に、約10年にわたってkintoneの販売を手掛けてきた。サイボウズの青野慶久社長は「これまでのパートナーシップがあってこそ今回の業務提携が実現できた」と強調した。
「リコーは大都市だけでなく地方の隅々までカバーできる体制を持っている。kintoneについても独自の支援センターをつくって対応してもらっており、ユーザーにも高く評価されている。この間、売り方を模索してもらった成果を反映して、リコーが一番販売しやすいかたちにカスタマイズしたものをリコーブランドで提供していく。kintoneの国内販売をさらに加速できると思っている。25年までにkintoneの売上高を3倍に伸ばしたい」(青野社長)
両社はkintoneの海外展開でも大きなシナジーを見込んでいる。kintoneは既に中華圏で1200社、その他アジア圏で1000社以上のユーザーを獲得し、北米でも契約中のサブドメイン数は700を超えるという。
直近では日系企業ではなくローカル企業ユーザーの伸びが大きいとしているが、基本的にはサイボウズが直販する体制しか整備できておらず、リソースも限られているため成長には限界があった。リコーグループのグローバルでの顧客基盤や営業力を生かして打破を狙う。
青野社長は「(リコーとの協業により)日本発のサービスがグローバルで使われる状況をどうしてもつくりたい」として、特に米国でのシェア拡大と欧州市場への進出を図りたい考え。山下社長も「リコーのグローバルでの顧客接点力とプラットフォームをうまく使っていただいて顧客を増やしていく。いい補完関係、いい連携ができると思っている」と応じた。
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