「メタバース」「電子工作」「サーバ管理」を一挙に体験できる“マイクラ”の魅力 そのIT要素を一挙紹介
世界で最も売れたインディーズゲームとも呼ばれる「Minecraft」は、ただの遊びと言うにはIT要素が多い。メタバースや電子工作、サーバ管理などMinecraftで感じられるIT要素を紹介する。
世界で最も売れたインディーズゲームとも呼ばれる「Minecraft」をご存じだろうか。筆者はちょうど1年前のゴールデンウイークに「そういえば有名だけどやったことないな。ちょっとだけ始めてみるか」と思ってうっかり手を出し、まんまとはまってしまった。今では休日に8時間溶かす程度に遊んでいる。それだけ中毒性の高いゲームだ。
有名でプレイヤーも多いゲームではあるが、遊んだことがない人も多いだろう。ITmedia NEWSでも米Microsoftが開発元のスウェーデンMojangを買収した頃から業界動向記事として取り上げてはいるが、内容やゲーム性にはあまり触れていなかった。
しかし、このゲームはただの遊びと言うにはIT要素が多い。今回はMinecraftがいかにIT要素満載なゲームなのかをイチから説明する。
そもそもMinecraftってどんなゲーム?
Minecraftはサンドボックスというジャンルのゲーム。始めると森や山、村などがある自然豊かな「ワールド」が生成される。地球の表面積の約7倍にも及ぶワールドに放り出され、後は好きにすればいいという投げっぱなし具合だ。
洞窟で鉱物を掘削(mine)するもよし、森を切り開いて建物を建てる(craft)もよし、近場のダンジョンを攻めるもよし、動植物を育てるもよし……。大学生が有り余る時間を全てMinecraftにつぎ込むほどにのめり込んでいる例をよく見る。
自由度が高いため、逆に何をすればいいのか分からないという意見もあるが、エリアボスやラスボスも用意されているため、オープンワールドRPGとして遊ぶこともできる。
Minecraftはメタバース ゲーム内で人生を歩む「サバイバル」
Minecraftには大きく分けて「サバイバル」と「クリエイティブ」という2つのモードがある。サバイバルモードは、放り出された世界で資材や食料を集めてサバイバル生活を送るゲームだ。
木を切り倒してこだわりの一軒家を作り、羊を育てて羊毛や肉をとり、村人や他のプレイヤーと交流する。夜になると襲ってくるゾンビやスケルトンをあしらい、たまに遠出してレアアイテムを集める――そんな生活を満足がいくまで続ける。任天堂の「あつまれ どうぶつの森」をイメージすると分かりやすいだろう。
最近は一種のバズワードとして乱用されている感もあるメタバースだが、筆者はMinecraft内での生活にメタバースらしさを感じている。ただの3D空間でもなく、イベント開催時にたまに立ち寄る場所でもない。Minecraft内には自分の家があり、食事や睡眠も必要。ちゃんと生活できるのだ。ワールドはオンライン上で公開できるため、世界中の人と同じワールドで暮らすこともできる。
MinecraftはXR VRモードやAR版も
プレイヤーの中でも触れている人は少ないかもしれないが、MinecraftにはVRモードがある。ヘッドマウントディスプレイを付けてワールドに飛び込めば、よりリアルなメタバースを感じられる。
他のVRソフトに比べて特徴的なのは広さ・高さだろう。Minecraftのワールドは地球7個分の面積を持つが、そんなワールドはそうそうお目にかかれない。高さも、上に約300m、下に約60m分あり、そびえ立つ山も深く暗い洞窟も目の当たりにできる。
過去にはスマートフォン向けに「Minecraft Earth」というAR対応ゲームがあったが、こちらはコロナ禍の外出制限により振るわず2021年6月に終了してしまった。
Minecraftはeスポーツ 相手プレーヤーと生死をかけた戦い
Minecraftはのんびりサバイバル生活をするゲームというイメージもあるかもしれないが、一方でPvP(Player vs Player)という遊び方もある。複数のプレイヤーが一つのワールドに集まって、フィールド内を移動しながら攻撃し合い、最後に生き残ったプレイヤーが勝つという分かりやすいゲームだ。PvP専用のワールドもある。
プレイ動画を見ると、想像以上に“ガチ”のプレイヤーが集まっていることが分かる。雪玉や弓、剣などの武器の仕様、リーチの取り方を把握した上で、ブロックで足場やバリアを作りながら戦うMinecraft独自のゲーム性があり、サバイバルゲームが好きな人も楽しめるeスポーツになっている。
Minecraftはバーチャル電子工作 限られたブロックでCPUを組む
ここまではゲームらしい遊び方だったが、MinecraftのIT要素はこの程度ではない。Minecraftの最も特殊な要素の一つが「レッドストーン回路」だ。「レッドストーン」という赤い鉱石を使って地面に線を書くと電子回路の配線になる。ボタンやレバーなどの入力装置や各種センサー、ライトやピストンなど出力装置もある。
一般的には、自動作物収穫機など自動化の仕組みを作る人が多く、オートメーションの概念も多少学べる。
レッドストーン回路は論理演算が可能なので、ワールド内にCPUや疑似量子ビット計算機を構築する人もいる。電子工作の“縛りプレイ”としても面白い上、同じ仕組みを持つ回路をいかに省スペースで実装するかに挑戦するやりこみ要素が楽しい。
Minecraftはプログラミング教材 JavaScriptでゲームを制御
Minecraftはプログラミング教育の教材にもなる。コードでキャラクターやブロックを操作できるため、あそびながらプログラミングを学べるという寸法だ。小学生でも理解しやすいビジュアルプログラミングから、JavaScriptでのコーディングまでが可能。
プログラミング学習で挫折する理由には、プログラム言語を理解するのが難しい以外にも、プログラムを書いてやりたいことがないために勉強のモチベーションが上がらないという問題もある。Minecraftなら「効率的に資材を集めてゲームを有利に進めたい」というニーズが、子供がプログラミングを学ぶ動機になり得る。
また、プログラミングまでせずとも「コマンド」を使って遊ぶこともできる。Excelの関数と似たシンプルなコマンドで「一瞬にして周囲を平地にする」「隠しアイテムを入手する」「ダンジョンの場所を探してテレポートする」といった操作ができて便利だ。遊び方によってはチート行為として禁止されることもあるが、建築などでは当たり前のように使われる。Minecraftでコマンドを使って遊ぶ子供なら、Excelの関数も似たイメージですぐになじめそうだ。
Minecraftはサーバ管理の教材にも みんなで遊ぶために覚える
Minecraftでは、プレイヤー同士でマルチプレイをする場合に、サーバを立ててワールドを運用する方法がある。サーバを立てない方法より自由度が高いのがメリットだ。
ゲームそのものでサーバの運用や管理を学ぶわけではないが「友達と一緒にMinecraftで遊びたい」という具体的なニーズで、小学生がサーバの運用方法を学ぶという話もある。
サーバやLinux、Javaの周辺知識はもちろん、ソフトウェアのバージョン管理や権限設定、定期メンテナンス、ユーザーの要望に応じたプラグイン導入の検討などなど……やるべきこと、考えるべきことは多い。
サーバ管理の知識や経験がある親の下でなら、子供が実際に手を動かして非常に実践的にサーバ管理を学べるだろう。情報セキュリティの面など大人が守ってやるべき部分は適宜サポートできると安心だ。
実践的・感覚的な学びに使えるMinecraft
こうしてみると、Minecraftを通して見るITはかなり身近に感じられることが分かる。メタバースは外から「バズワードだなぁ」と思って見るより中に入って実感でき、レッドストーン回路は手を動かして「なかなか動かないなぁ」など思いながら試行錯誤でき、プログラミングやサーバ管理は具体的なニーズを基にモチベーションを保ちながら学べる。これが、Minecraftが教育的なゲームである理由といえる。
ただ、注意すべきは「ゲーム依存症」だ。明確なゴールを自分で設定しないと、本当にいつまでも遊び続けられてしまう。今回紹介した以外にも「建築」や「面白地形観光」「エンダードラゴン討伐」など遊び方はまだまだある。どの遊び方で“沼”に落ちるかは分からない。
遊んでみると分かるが、このゲームはそもそもプレイ時間が長くなりやすい。1日のゲーム時間が1時間以内に定められている地域では、時間内に森から木を切り出して見た目が整った家を建てられるかが微妙なラインだ。
メタバースの要素もあるため、寝たり食べたりする以外の約15時間をMinecraft内で過ごしてしまう恐れもある。そういったさじ加減も学べるといいのかもしれない。ゴールデンウイークは時間があるが、節度を以てMinecraftデビューしてみてはいかがだろうか。
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