Appleは「Apple Payで支配的立場を乱用」と欧州委員会が予備的見解の異議申立書
欧州委員会はAppleに対し、「Apple Pay」でモバイルウォレット市場での支配的な地位を悪用しているという予備的見解の異議申立書を送った。Appleは「支払いを行うために使える多数の選択肢の1つにすぎない」としている。
欧州連合(EU)の欧州委員会は5月2日(現地時間)、米Appleに対し、同社のNFCベースのモバイル決済サービス「Apple Pay」で、モバイルウォレット市場での支配的な地位を悪用し、競合他社による決済技術へのアクセスを制限しているという予備的見解の異議申立書を送ったと発表した。
欧州委員会のコミッショナー、マルグレッタ・ヴェスタヤー氏は「Appleは、競合他社がモバイルウォレットを開発するために必要な技術へのアクセスを制限している。われわれは同社がApple Payのために競争を制限している可能性があるとみている。これが事実であれば、そうした行為はわれわれの競争規則の下では違法だ」と語った。
この申し立ては、店舗での支払いのためにモバイルウォレットのサードパーティが入力したNFCへのアクセスにのみ問題があるとしている。
これは最終決定ではなく、Appleには欧州委員会の調査結果に対応する機会がある。AppleがEUの規則に違反したと決まれば、年間収益の最大10%の罰金が科される。また、ビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性もある。
Appleは米Reutersなどのメディアに対し、「Apple Payは、欧州の消費者が支払いを行うために使える多数の選択肢の1つにすぎず、業界をリードするプライバシーとセキュリティの基準を設定しつつ、NFCへの平等なアクセスを保証している。われわれは従来どおり欧州委員会と協力し、欧州の消費者が安心で安全な環境で選択した支払い方法にアクセスできるようにしていく」という声明文を送った。
欧州委員会は昨年10月、App Storeを介した音楽ストリーミングアプリの配信で支配的な立場を乱用し、音楽ストリーミング市場での競争を歪めたとの予備的見解を示す異議申立書を送っている。
EUはIT企業大手、いわゆるビッグテックの力を制限する動きを加速している。3月には自社製品の優遇の禁止などを規定する「Digital Markets Act(DMA:デジタル市場法)」に合意し、4月には利用者保護を義務付ける「Digital Services Act(DSA:デジタルサービス法)」に合意した。DMAは早ければこの10月に、DSAは2024年に施行の見込みだ。
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