“インボイス制度”に見込むビジネスチャンス ARR40%増のマネフォに戦略を聞く(2/2 ページ)
2023年10月に始まる消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)。さまざまなバックオフィスSaaSベンダーがビジネスチャンスを見込む中、成長を続けるマネーフォワードはどんな戦略を展開していくのか。CSOに聞く。
マネフォは「紙と電子の混在」見据えデジタルインボイスに注力
新制度開始に伴う“インボイス需要”を見込み、ベンダー各社はすでにサービスの展開を始めている。例えばマネーフォワードは適格請求書発行事業者への登録を支援するサービスとして、いくつかの質問に答えれば申請用の書類を作成できる「インボイス制度の登録申請」を無料で提供している。
デジタルインボイス対応を狙った動きもある。「日本全国の会社がインボイスをデータでやりとりすることに対応できるとは全く思っていない。受け取る側からすると、半分は紙、半分はPDFということになる。紙と電子が混在する中で、請求書の一元管理はどうするんだという事態になる」と山田CSO。
改正電帳法では、データで受け取った書類を印刷して保存することは禁じられている。つまり請求書を一元管理するにはデータで保存するしかないことから、マネーフォワードはデジタルインボイスの管理を効率化できる機能開発などに注力しているという。
例えばクラウド請求書管理ツール「マネーフォワード クラウド債務支払」では、API連携やスクレイピングを活用し、ユーザーがメールで受け取ったPDF形式の請求書を自動でツール内に取り込める機能を2021年11月に追加している。ユーザーがいちいちメールの添付ファイルをダウンロードし、それをツールにアップロードし直す手間を省けるという。
4月には会計ソフト「マネーフォワード クラウド会計」など3サービスに、ECサイトなどで発行した電子領収書といった証憑データを自動でツールに取り込める「証憑自動取得機能」を追加した。取得した証憑データはマネーフォワードのクラウドストレージ「マネーフォワード クラウドBox」に自動で保存できる。
従来は企業がECサイトで買い物をした場合、クレジットカードなどの明細などを保存する場合が多かったが、インボイス制度開始後はインボイスを保存しなければならない。しかしECサイトの中には電子領収書などを一括でダウンロードできる機能を備えていないものもある。このままではデータを一つ一つ取り込む手間が生まれる可能性があることから、効率化の需要を見込んで機能を加えたという。
とはいえ、一連の機能については競合他社も類似サービスを提供している。例えばfreeeは法人向けEC「Amazonビジネス」と連携し、明細の作成を効率化するサービスの提供を始めている。提供が始まったのは22年1月で、証憑自動取得機能に先行している。
マネーフォワードも他社の動向は把握しており、アグリゲーション(データの自動取得や集約)の機能を強化して対応する方針だ。例えば証憑自動取得機能は現在、Amazon.co.jpやアスクルといったECサイトに対応しているが、今後サポートの対象を広げる予定という。ただし、基本的には法改正への対応になることから、各社の差が出にくい可能性も見据えて施策を展開するとしている。
今後については、請求書を受け取る側だけでなく、発行する側に向けた施策を展開する方針だ。「発行側に向けたサービス開発の優先度を上げている。単純に紙をデータ化して保存するだけでなく、そもそもデータで発行しやすいようにし、企業の業務フロー自体を変えていきたい」(山田CSO)
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