Apple Silicon M2を外側から眺めてみて分かった、その性能の源泉とM3の可能性(3/3 ページ)
Armをはじめとするプロセッサの動向に詳しく、RISCプロセッサ、Apple Silicon連載記事も執筆した大原雄介さんに、Appleが発表したApple Silicon M2プロセッサの中身を、今ある情報から推測してもらった。
今ある情報から想像できること
さてこの結果から想像できることだが、
- 少なくともGPUには手が入っておらず、単に8コアを10コアに増やしただけである。
- トランジスタ数ほどにはダイサイズが増えていないあたり、一部を高密度セルライブラリで作り直した可能性がある。その可能性が一番大きいのは、増量されたキャッシュ周りである。ここに高密度セルライブラリを入れることでダイサイズ削減と省電力を両立したのではないかと思う。
- CPUコアそのものも基本的には同じと思われる。ただしPerformance Coreは変更ないが、Efficient Coreの方はひょっとして高密度セルライブラリで作り直した可能性がある。これにより、同じ消費電力であればより高速で動作するようになったのかもしれない(代償として、Efficient Core側の動作周波数の上限はM1よりも下がった可能性がある)。
といったあたりだろうか。
性能向上は、キャッシュ容量の大型化とメモリ帯域の強化で実現した格好だ。そもそも性能比較がマルチスレッド性能のみ、というあたりは要するにシングルスレッド性能というかIPCそのものは変わらない傍証のようなものである。
またこれはCPUとGPUの両方にいえることだが、「どんなテストで何を比較したのか」が分からないので、これだけでは何とも判断できない。
ちなみにM1ではメモリとしてLPDDR4x-4266を利用しており、なのでM2ではLPDDR5-6400を搭載していると考えられる。メモリ帯域が100GB/secだから、メモリバス幅は128bit。
この条件に見合う汎用品としては、MicronのMT62F1536M64D8CH-031 WTが相当する。64bit幅で6400Mbps、容量96Gbitとなっており、これを2つ並べれば128bit幅で帯域100GB/sec、メモリ容量24GBとなる。
MicronはLPDDR5で容量32Gbit/64bitの製品もリリースしている他、128Gbit品のサンプル出荷も行っている。
だからメモリが32GBのM2が出ても不思議ではないだろうし、下位機種向けには16GB/8GB構成のものを提供することも可能だ(さすがに8GBはないと思いたいが)。
というあたりだろうか。
NPUはコアの数を増やせば性能40%アップは容易だろうし、Secure EnclaveはM1にも搭載されているから、多少性能を向上したり対応する暗号化手法を増やしたり、Secure Storageを増やしたりといったことはあるかもしれないが、大きな違いではない。
今回のM2は、M1シリーズと同じように今後Pro/Max/Ultraと展開される可能性もなくはないが、思ったほどに変更が少ないあたり、Pro/Maxまでは行ってもUltraまでは行かないかもしれない。
当たり前であるが、CPUのアーキテクチャの刷新には時間が掛かる。IntelですらTick-Tockとかいってアーキテクチャの大変更は2世代毎に留めていたことを考えると、今回のM2はTockの方であり、次のM3(仮称)で再び大変更となるTickが来るのかもしれない、と筆者は感じた。
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