ソフト開発での多重下請、公取委が取り締まり強化へ 「優越Gメン」が立ち入り調査
公正取引委員会は、ソフトウェア業の下請取引などに関する実態調査報告書を公開した。資本金3億円以下のソフトウェア業2万1000社を対象に、アンケート調査などを行ったところ、多重下請け構造に起因する違反行為が見られたという。
公正取引委員会は6月29日、ソフトウェア関連企業の下請取引などに関する実態調査報告書を公開した。資本金3億円以下のソフトウェア関連企業2万1000社を対象にアンケート調査などを行ったところ、違反行為が多重下請け構造によって連鎖していることを確認したという。そのため、多重下請構造の下で生じる問題への対応を強化する方針を示した。
下請代金を巡っては、エンドユーザーや上流発注者からの買いたたきや減額、支払遅延などの違反行為を確認。ソフト開発の取引では「使いやすい機能」などのオーダーが発注者ごとに異なり、当事者間の共通認識を形成しづらい。そのため不当な給付内容の変更、やり直しなどが起こっている。これらの行為が業界の多重下請構造によって、サプライチェーン上で連鎖していたと分かった。
公取委は、エンドユーザー側の契約内容の不明確さが独占禁止法・下請法違反行為を誘発する原因になると指摘。契約内容の明確化を図るべきと提言した。また、多くの事業者は「不必要な中抜き事業者の存在を感じている」と回答。ここにも多重下請構造を深める原因があり、独占禁止法・下請法の執行を強化する方針を示した。
他にも、ソフトウェア業界は独占禁止法上の優越的地位の乱用に関する問題も潜在的に多数存在する可能性があるという。そのため今後、この調査のために「優越Gメン」による立入調査を行い、関係事業者に注意喚起文書を送付するとしている。
同調査は21年10月から行っていたもの。これ以前の前回調査は2004年で、17年ぶりとなる。
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