日本漫画家協会、インボイス制度に反対声明 “本名バレ”のリスクなど指摘
日本漫画家協会は、2023年10月から始まる消費税の仕入税額控除の方式「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)に反対する声明を発表した。「多くの漫画家に不利益を喚起しかねない懸念事項が払拭されていない」とし、見直しを求めている。
日本漫画家協会は7月4日、2023年10月から始まる消費税の仕入税額控除の方式「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)に反対する声明を発表した。現行のインボイス制度では「多くの漫画家に不利益を喚起しかねない懸念事項が払拭されていない」とし、見直しを求めている。
インボイス制度で出版社などの発注元が仕入れ税額控除を行うためには、取引事業者から登録番号が記載されたインボイス(適格請求書)を発行してもらう必要がある。そのためには、免税事業者である漫画家は課税事業者への変更を余儀なくされる。
これにより事務処理負担が増加する懸念があり、創作活動を阻害するおそれがあると指摘。インボイスを発行できない場合も、発注元と漫画家との関係悪化や免税事業者であることを理由に取引が中止されるなどのリスクもあるとしている。
また、インボイス発行事業者になると「適格請求書発行事業者公表サイト」に本名が公表されることも、ペンネームで活動することの多い漫画家にとって不利な点であると説明。個人情報保護への懸念を抱く漫画家も存在するという。
同協会は「インボイス制度は商品などのカテゴリーによって8%と10%の複数税率が混在する『軽減税率制度』に伴い導入されたもので、導入前に一時的な一律税率化を検討する余地はある」とし、「懸念事項を払拭できない限り、現行のままインボイス制度が導入されることは看過できない」と訴えた。
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