猫がライブ配信できるアプリ ゲーム中の猫に“投げ銭”も可能 韓国の研究者らが開発:Innovative Tech
韓国のKAISTの研究チームは、猫がタブレットを使用してライブ配信ができるアプリケーションを開発した。猫はディスプレイ上を動くネズミや金魚をゲーム感覚でタッチして遊び、不特定多数の視聴者はその様子を閲覧する。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
韓国のKAISTの研究チームが開発した「MeowPlayLive: Enhancing Animal Live Streaming Experience Through Voice Message-Based Real-Time Viewer-Animal Interaction」は、猫がタブレットを使用してライブ配信ができるアプリケーションだ。猫はディスプレイ上を動くネズミや金魚をゲーム感覚でタッチして遊び、不特定多数の視聴者はその様子を閲覧する。
視聴者は自分の声を録音した音声付きオブジェクト(ネズミや金魚など)を送信でき、猫が見る画面上にユーザーアカウント名付きでオブジェクトを表示できる。タッチが成功すると録音した音声が流れ、猫の耳に届く。
投げ銭(寄付)も可能で、音声付きオブジェクトに寄付金を付与できる。金額に応じて表示されるオブジェクトの大きさや色が変わる。
配信側のセットアップでは、猫の近くの床に横向きでタブレットを置き、猫が操作する様子を撮影するカメラを少し離れた場所に設置する。これにより猫はタブレットを容易にタッチ操作でき、その様子をカメラで捉えライブ配信できる。
タブレットのディスプレイには、常にランダムに動き続けるオブジェクト(ネズミ、金魚など)が表示される。動く何かを触れたくなる猫の習性を利用し、そのオブジェクトをタッチするよう促す。
タッチして遊ぶ猫の様子を不特定多数の視聴者は、ライブ配信を通して閲覧する。視聴者は音声メッセージを送ることが可能で、メッセージ付きオブジェクトをその画面に表示させることもできる。オブジェクトに並んで視聴者のアカウントも表示され、自分が送ったオブジェクトを確認できる。
猫がそのオブジェクトをタッチすると、同時に録音した声がタブレット側で再生される。視聴者側にもタッチの成功が通知され、自分が送ったメッセージを聞いている猫の様子もライブ映像で確認できる。
さらにメッセージ付きオブジェクトを送る際に投げ銭も付与でき、寄付金付きのオブジェクトを送ることもできる。金額に応じてオブジェクトの大きさや色が変わる。
猫は色の区別が得意ではないため、色の変化に関しては視聴者同士の指標としての役割が強い。またライブチャットには色付きでアカウントとテキスト、金額(ポイント)が表示される。さらに投げ銭の累計金額が多い順に、ランキング形式でアカウントが表示される。
実際に猫のライブ配信を行い、視聴者に見てもらう実験を行い、この体験が視聴者にどのような影響を与えるかを調査した。
アンケートの結果、視聴者は自分の声を聞いてもらうことを楽しみ、猫に感情移入するようになった。また猫がインタラクションの最終的な意思決定者であるため、視聴者は猫に対してより強い感情的な愛着を抱くようになったという。
ある視聴者は、「猫にメッセージ付きオブジェクトを触らせる」という共通の目標を達成するために、人間と猫が協力するチームゲームのような感覚を覚えたと述べている。
研究チームは視聴者と視聴者が遠隔でコラボレーションできるような機能があれば、より面白くなるかもしれないと考えている。一斉にメッセージ付きオブジェクトを送信し、猫の注意を引くといった作戦が行えるなど、利用の幅が広がることを想定している。
一方で、このアプリを公開する場合、さまざまな想定される課題を考えなければならない。例えば、動物が金銭的な利益のために利用される可能性を研究チームは懸念している。飼い主が多額の投げ銭を獲得するために、猫に余計なストレスやフラストレーションを与えてしまうケースが考えられるだろう。
猫を守りたい飼い主のために、猫が疲れたり過度なストレスがかかったりした際には投げ銭をできないようにする(もしくは送信できる間隔を空ける)、といったシステム上の措置を取れるようにすることが考えられる。視聴者が何十万人、何百万人になる可能性があるため、猫に視聴者の大量フィードバックが殺到しないよう保護する仕組みは重要と考えている。
Source and Image Credits: Chee Eun Ahn, Woohun Lee, Hunmin Park, and Jiwoo Hong. 2022. MeowPlayLive: Enhancing Animal Live Streaming Experience Through Voice Message-Based Real-Time Viewer-Animal Interaction. In Designing Interactive Systems Conference (DIS ’22). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 849-864. https://doi.org/10.1145/3532106.3533553
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