アニメーターと演出家でつくる「日本アニメーター・演出協会」(JAniCA)は7月5日、2023年10月に始まる予定のインボイス制度(適格請求書等保存方式)に反対する声明を出した。クリエイターに過度な負担を生じさせ、アニメ制作の現場環境を悪化させると懸念している。
JAniCAによると、アニメ制作者の多くは個人事業主であり、そのほとんどは免税事業者(前々年度の課税売上高が1000万円未満)だが、インボイス制度導入で課税事業者になることを迫られ、都度、適格請求書が必要になる可能性がある。
その場合、「アニメ制作者のみならず、 制作会社にとっても新たに相当の事務負担が発生する」と指摘。「行政負担の簡素化やDX化の流れにも逆行する」とし、簡易で安価な制度が整備されるまでは、現状の経過措置(免税事業者からの仕入は全額控除可能)を継続するといった対応を求めている。
さらに、「アニメ制作会社の半数近くは赤字」だという現状を鑑みると、「アニメ制作者のみならず、制作会社をも運用コスト・税負担の双方で痛めつけ、 制作現場の環境を悪化させる」と訴える。
加えて、インボイス制度は、軽減税率導入に伴って導入されたことを踏まえ、「一部業種にのみ恩典の及ぶ軽減税率導入により、業種に限らずひろく認められていた事業者免税点制度が実質的に廃止されることは、 税の公平という大原則に反する不当なもの」と批判している。
インボイス制度は、2023年10月から運用が始まる予定。今年に入って、日本出版協議会や日本漫画家協会といったクリエイター関連団体が相次いで反対声明を発表している。
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