発売から11年、進化だけを目指さない「おもいでばこ」の歩み:小寺信良のIT大作戦(6/6 ページ)
バッファローの製品の中でも異色中の異色である「おもいでばこ」。通常のIT機器とは違う発想で作られたこの製品・サービスのコンセプトについて語る。
専用リモコンを紛失したが
筆者宅の旧「おもいでばこ」は「PD-1000-L」だが、3年前に転居して以来、なんとなく設置するのが面倒でそのまま放置状態になっていた。そして今回新モデルが出たということで、早速引っ越しを行な…いたかったのだが、なんと引っ越しやら部屋の模様替えやらしている間に、専用リモコンを紛失してしまった。
起動はするものの、内部のキャパシタが飛んでおり、日付設定画面から先へ進まない。んーきっとなんか方法があるはずと考えた結果、あ、そうだスマホアプリがリモコン代わりになるんだったと気がついた。
さっそくアプリを起動してみたが、当然スマホと旧「おもいでばこ」は同じネットワーク内にいないといけない。だがWi-Fiルータも今年買い換えたばかりで、旧「おもいでばこ」が繋がっていたルータはもうない。
んーきっとなんか方法があるはずと考えた結果、あ、そうだ有線LANで繋げばいいんだと思い立ち、旧「おもいでばこ」をルータにケーブル接続したところ、無事スマホをリモコンとして操作することができた。「おもいでばこ」は弱者のためのデバイスだと思われがちだが、だからこそどう転んでも手詰まりにならないよう、入念に仕様が組まれているという一例である。
加えて大きな変更は、「クラウドアップロード」機能がついたことだ。「おもいでばこ」の中身をGoogle Photosにアップロードできる。外出先で写真を見るだけでなく、Google Nest Hubにも対応する。この機能は、「PD-1000-L」でもファームアップで対応した。
新「おもいでばこ」は、やっと4K対応したから買うという人もいるだろう。だがそれよりも大きいのは、旧製品ユーザーの引っ越し先であるということである。「PD-1000-L」は第2世代初期の製品なので、HDDのステータスが分かる「みまもり合図」機能が搭載されていない。したがって、替え時がわからない。そろそろ危ないと思いつつ、そのままだったわけだ。
デジタルカメラの時代になり、今は子供用の「紙焼き写真アルバム」がない。すでに「紙焼き写真アルバム」の意味が分からない人もいるはずだ。じゃあ娘が嫁に行くときに持たせてやる写真はどうするのか。自分と嫁のスマホ、それぞれのクラウドにあるだけでは、どうにもならない。
だったら今のうちに「おもいでばこ」へ落とし込んでおいて、嫁に行くときに「おもいでばこ引越し」機能を使って「おもいでばこ」を「分家」すればよい。結婚だけではなく、子供が一人暮らしで家を出るような年齢に近づいているなら、そろそろ考えておくべきだ。
物理データが今ここにあり、本体をなくしてしまわない限りずっとここにある。クラウドサービスの形もいずれは変わっていくのかもしれないが、今はそういう安心感がない。すくなくとも過去の写真の行く末を考えてくれているチームがあり、製品があることは、覚えておいて損はない。
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