代理販売ビジネスはSaaS業界に“一枚噛める”のか SB C&Sが商機を見込むワケ
SaaSにおける代理店戦略が今後拡大すると見込むSB C&S。その理由と、同社が他のグループ企業を巻き込んで展開する戦略を読み解く。
SaaS市場の成長に伴い、SaaSベンダーを対象にしたビジネスも活発化している。SaaSの提供を支援するSaaS「SaaS for SaaS」などがその一例だ。さまざまな企業が、好調な市場に“一枚かむ”べく策を練っている。
ソフトバンク子会社で、ソフトウェアの流通や代理店ビジネスを手掛けるSB C&S(東京都港区)もその一社だ。同社はSaaSの営業戦略において、代理店の重要性が増すと見込んでおり、現在はSaaSの代理販売に関する体制を強化しているという。
「SaaSビジネス分野を徹底的にやっていく」と今後の方針を強調するのは、SB C&Sの草川和哉専務執行役員。SB C&Sが見込むSaaS営業戦略の今後と、これから仕掛ける戦略を、7月8日にポートタワー竹芝で開催したイベント「SaaS Vendor Conference」で草川専務が講演した内容から探る。
「IT人材の偏り」が代理店の必要性につながる?
SB C&Sの調査によれば、日本においてSaaSは8割が直販、2割が代理店経由で流通しているという。「案件ごとに、ちょこちょこっと代理店が関与している状況」と草川専務。一方で、今後はこの構成が変わると見込んでいるという。
SB C&Sがこう考える背景には、IT人材が所属する企業の偏りがある。情報処理推進機構(IPA)によれば、日本のIT人材約72%がIT企業に所属しており、ユーザー企業は人材不足の状態にある(2017年時点)という。
IT人材を抱えないユーザー企業は、パートナー企業がいないとシステムを導入できない状況が続く。一方でSaaSの利用拡大は続く見込みであることから、今後代理店の重要性が高まると想定しているわけだ。
ベンダーと販売事業者をデータで接続 C&Sが進める3つの戦略
こういった考えを踏まえ、SB C&SはSaaS向けの体制を強化。いくつかの新しい施策を始めている。一つはSaaSベンダーと、実際に販売業務を受け持つ事業者をつなぐサービスの提供だ。SB C&Sは現在、SaaSベンダーと販売事業者の双方に向けた契約管理サービス「ClouDX」を開発・提供している。今後、ClouDXに機能を追加し、さらに展開を広げる方針という。
ClouDXは、販売業務を受託したパートナー企業が、顧客に提供したSaaSの契約情報や課金形態を確認できるサービスだ。ベンダー側も同様にデータを閲覧し、自社の事業に活用できる。すでに約150社のベンダーに提供しているという。
一方で、ClouDXにはビジネス上の課題もあった。ベンダーやパートナー企業が共通の情報を確認でき、業務の円滑化につなげられる一方、販売そのものを強化する機能がないことだ。つまりClouDXを導入しても、直接SaaSの提供拡大につながらない問題があった。
この問題を受け、SB C&Sはパートナー企業がClouDX上でECサイトを構築できる機能を開発し、導入の拡大につなげる方針だ。ECサイト上の販売情報も管理できる仕組みで、2022年度内に実装するという。
もう一つは人員の強化だ。営業やマーケターなど約40人からなるSaaS専門チームを設置。実際に販売を受け持つ事業者と協力し、SaaSの販売強化に向け活動するという。今後は人員は今後も増やす方針で、カスタマ―サクセスなどを増員するという。
最後はグループ企業との連携強化だ。同じソフトバンクグループのアイティメディアやアイティクラウド(東京都港区)と協力。アイティメディアが運営するWebメディアや、アイティクラウドが運営するIT製品のレビューサイト「ITreview」の読者データを活用し、営業活動を効率化するという。
直販×代理店販売をハイブリッドで進めるベンダーも視野
3つの戦略でSaaSにおける代理店活用の拡大を目指すSB C&S。草川専務は、直販と代理店販売を並行して進めるベンダーも巻き込んでいきたいと意気込む。
「ベンダー1社で全てをカバーする体力があれば、直販を続けることもできるかもしれない。一方で、直販と代理店販売をハイブリッドで行うことも一考の余地があるはず。ベンダーと一緒に“チャネルビジネス”を広げていきたい」(草川専務)
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